狩りをする猫を、悪者にしない
猫が野生動物を持ち帰る行動を、悪さやしつけ不足と決めつけずに考える第1回。研究が扱った対象と、猫の自然な行動を整理します。

導入会話
マロン学長「外から帰った猫が、何かをくわえてきたら、すごく困っちゃうよね。」
いち教授「困る気持ちは自然だよ。でも、猫を悪い子と決める前に、狩りが猫にとってどんな行動かを見ておこう。」
この回でわかること
- 狩りは猫に残る自然な行動の一部
- この研究は、野生動物を家へ持ち帰る猫を対象にした
- 猫の福祉と地域の野生動物を、どちらか一方だけにしない
持ち帰りは、困りごとでもある
鳥や小動物を家へ持ち帰られると、飼い主にとっては対応が難しい場面です。地域の野生動物に与える影響を心配する人もいます。
一方で、追う、待ち伏せる、飛びかかることは、猫に備わった行動の流れです。飼い猫は食事をもらっていても狩りをします。空腹だから狩るのではなく、獲物の動きが行動を引き出すからです。持ち帰りを見て叱るだけでは、猫が何をしているかを理解することにはつながりません。
マロン学長「猫はわざと困らせているわけじゃないんだね。」
いち教授「そうだよ。研究は、狩りを力で妨げるだけでなく、猫の暮らしに加えられる方法を探したんだ。」
これまでの対策と、この研究の問い
猫の狩りを減らす方法として、これまで首輪の鈴、鳥に見えやすい首輪カバー、よだれかけ型の装具などが試されてきました。どれも、狩りそのものを止めるのではなく、狩りの成功を妨げる道具です。効果はまちまちだと報告されています。
今回の研究者は、別の角度から問いを立てました。猫の食事や遊びといった暮らしの側を変えることで、狩りへ向かう傾向そのものが変わるだろうか、という問いです。道具で妨げる方法と並べて、フードの変更、パズルフィーダー、毎日の物遊びを同じ試験の中で比べました。
猫の側から見れば、遊びや食事は暮らしの質そのものです。狩りを減らす方法が同時に猫の福祉にもつながるなら、飼い主が続けやすくなるはずだ、というのが研究の出発点でした。
飼い主の側の事情も、研究の設計に組み込まれています。狩りを心配する飼い主の中には、猫を室内に閉じ込めることや首輪をつけることに抵抗を感じる人がいます。猫が嫌がる方法は長続きしません。研究者は、飼い主が受け入れやすく、猫にも負担の少ない方法を探すことを目的の一つに置いていました。
研究が見たのは、全ての猫ではない
今回の研究は、野生動物を捕らえて家へ持ち帰る猫がいる家庭を対象にしています。参加した飼い主は、事前の記録期間に少なくとも一つの獲物が持ち帰られた家庭から選ばれました。室内だけで暮らす猫や、捕らえた物を持ち帰らない猫を含む全ての猫の研究ではありません。
場所は英国南西部で、春から初夏にかけての約3か月間です。日本の住宅地や、季節の違う時期に同じ結果になるとは限りません。
英国は、猫が自由に外へ出る飼い方が一般的な国です。日本のように完全室内飼育が多い地域では、この研究の対象になるような猫の割合そのものが違います。室内で暮らす猫にとって遊びが大切であることは変わりませんが、「持ち帰りが減る」という結果を室内猫にそのまま当てることはできません。
目の前の猫に合う方法は、屋外へ出る時間、地域の環境、年齢、体調、家族の暮らしによって変わります。研究の結果を一つの答えにせず、考える出発点として使います。
今日からできること
- 持ち帰りがあった時は、叱る前にいつ・どこで・何を持ち帰ったかを記録する
- 猫の行動と、地域の野生動物への配慮を別々にせず考える
- 「狩りを止める」より「狩りに向かう暮らしを変える」という見方を持つ
まとめ会話
マロン学長「次は、研究がどう比べたのかを知りたい!」
いち教授「うん。第2回では、219家庭で行われた試験の形を見よう。」
次回予告
第2回は、219家庭・355匹が参加した12週間の試験で、何を比べたのかを整理します。