人の家族の名前も顔と結びつける?
家庭猫26匹に人の家族の名前と顔を提示した実験を読みます。全体の一致・不一致差はなく、家族人数と同居期間に応じた結果だった点、年齢との相関を解説します。

導入会話
マロン学長「猫同士だけでなく、人の家族の名前も分かるのかな?」 いち教授「実験2で調べていますが、結果は同居猫の実験より限定的です。」 マロン学長「家族の顔が違えば、みんな長く見たわけじゃない?」 いち教授「その通りです。まず全体差がなかったことから読みましょう。」
この回でわかること
- 実験2の26匹と刺激の作り方
- 条件の主効果がなかったこと
- 家族人数・同居期間・年齢の関係
2~5人と暮らす26匹
実験2は、2人を超える人と暮らす家庭猫26匹を対象にしました。平均年齢は5.2歳、家族人数は2~5人、同居期間は6~180か月でした。
「お母さん」など、その家庭で普段使う呼び名を録音しました。話者は飼い主ではない人で、画面に出る本人が自分の名前を呼ぶこともありませんでした。
実験1とほぼ同じ手順ですが、実験1は飼い主の声、実験2は知らない人の声です。猫と人の結果をそのまま比較できません。
全体の一致・不一致差はない
解析したのは一致32試行、不一致27試行です。42試行は顔表示中に画面へ注意を向けなかったため除外されました。期待違反指数を計算できたのは16匹でした。
一致・不一致だけの主効果は有意ではありませんでした(p=0.797)。26匹全体が人の名前と顔の不一致を長く見た、とは報告されていません。
同居猫の実験と同じ見出しで「猫は家族の名前を知る」とまとめると、この違いが消えてしまいます。
家族人数との交互作用
条件と家族人数の交互作用(p=0.048)、条件・家族人数・同居期間の三者交互作用(p=0.047)が報告されました。期待違反指数も家族人数が多いほど高くなりました(p=0.025)。
著者らは、家族が多いほどほかの人が名前を呼ぶ場面が増え、名前と顔の対応を学ぶ機会が多い可能性を挙げています。ただし、実際の呼名回数は測っていません。
同居期間と年齢を分けられない
長く同居した猫で不一致への注視が長くなる傾向がありました。しかし同居期間と猫の年齢は r=0.89と強く相関していました。
長く暮らした経験の効果なのか、年齢に伴う別の変化なのかを、このデータでは分けられません。
「長く一緒にいれば覚える」という因果の結論にはできません。
人の名前について言える範囲
人の家族の名前と顔を結びつける可能性はありますが、全体で安定した一致・不一致差ではありません。家族構成や同居期間との関係をさらに調べる必要がある結果です。
家庭で家族の名前を呼び、猫が誰を見るかを試しても、この研究と同じ条件にはなりません。反応がなくても、人の名前を知らないとは判定できません。
今日からできること
- 交互作用の結果を「すべての猫に効果」と言い換えない
- 同居期間の結果を見る時は、年齢と分離できたか確認する
まとめ会話
マロン学長「人の家族では、全体の一致・不一致差はなかったんだね。」 いち教授「ええ。家族人数や同居期間との組み合わせで傾向が変わりました。」 マロン学長「長く暮らした効果も、年齢と分けられていない。」 いち教授「だから、人の名前を知っているという結論は限定して伝えます。」
次回予告
第5回は、家で名前テストをせず、普段の反応をどう観察するかをまとめます。
参考文献
Takagi S, et al. Cats learn the names of their friend cats in their daily lives. Scientific Reports. 2022;12:6155. https://doi.org/10.1038/s41598-022-10261-5