87人の回顧調査は何を測った?
NZの飼い主87人による回顧オンライン調査で分かる経験と、猫の直接観察がない限界を整理します。

導入会話
マロン学長「87人に聞いたって、どんな人たちにどう聞いたの?」
はち助教授「過去の切り替えを振り返ってもらう、オンラインの質問票よ。誰が答えたかで、読める範囲が決まるの。」
この回でわかること
- 回答者の集め方と人数
- 回顧調査で分かること・分からないこと
- 「全員が完全室内」ではなかったこと
一週間のオンライン調査
2024年12月2日から8日、ニュージーランドで151回答を集め、基準を満たす87人を分析しました。18歳以上で、少なくとも1匹を屋外アクセスのある暮らしから、室内のみ、囲いのある屋外、リード付きの外出のいずれかへ移した経験のある人が対象です。
募集は、猫の福祉に取り組む団体のネットワークなどを通じて行われました。参加者は自分で応募した人たちで、著者らも、猫の福祉への関心が平均より高い人が集まった可能性があると書いています。
過去を振り返る調査
参加者は過去の一匹の移行を振り返って回答しました。この設計は、予定外の移行や罪悪感など幅広い経験を集められる一方、記憶のずれがあります。猫を直接観察せず、移行前の基準値もありません。
著者らは、切り替えがうまくいった人の方が参加しやすく、うまくいかなかった人は答えなかったかもしれない、という偏りも挙げています。「順応した」という回答の割合は、この偏りを含んだ数字として読みます。
質問の言葉があいまいだった点も、著者ら自身が認めています。たとえば「攻撃性の変化」は相手が猫か人かを分けておらず、「遊びの変化」も猫が始めた遊びか、人が誘った遊びか、おもちゃ遊びかを区別していません。
マロン学長「思い出して答えると、実際と少しずれることもあるよね。」
はち助教授「そうなの。それでも、人がどう感じたかを集めるには向いている方法なのよ。」
数字と自由記述の両方を集めた
質問票には、理由や準備、追加した資源などを複数選べる選択式の質問と、困ったこと・よかったことを自由に書く欄がありました。選択式は人数と割合で集計し、自由記述はテーマごとにまとめる質的分析を行っています。第4回で見る「困難」や「利点」の一覧は、この自由記述から取り出されたものです。
調査は倫理委員会の承認を受け、参加者の同意を得て行われました。資金はニュージーランドの動物福祉団体二つから提供され、著者らは競合する利益はないとしています。原稿の作成に生成AIを使っていないことも開示されています。
87匹すべてが室内だけではなかった
調査時点で決して外へ出ない猫は35匹(40.2%)でした。残りは程度の差はあれ何らかの形で外に出ており、10匹には無監督の屋外アクセスがありました。著者らは、この10匹はまだ切り替えの途中かもしれないと考え、記述と質的分析には含めましたが、統計検定からは外しています。
猫の約半数は室内になってから2年未満で、57.5%は2歳を超えてから室内へ移されていました。全87匹が完全な室内のみを続けていたわけではありません。外に出ている猫の順応や行動の変化は、室内のみの猫と同じ物差しでは比べられない、と著者らも注意しています。
飼い主がどう経験したかを調べた研究で、猫の客観的な幸福や手順の効果を測った研究ではありません。
今日からできること
- 回答者数と現在の飼育状態をセットで読む
- 「飼い主がそう感じた」と「猫で測定した」を分ける
まとめ会話
マロン学長「87人の経験談で、猫を直接測ったわけじゃないんだね。」
はち助教授「ええ。その前提を持って、次は『すぐ慣れた40%』という数字を読んでみましょう。」
次回予告
順応期間の数字を、家庭の期限へ変換しない読み方です。