論文要約:猫の攻撃行動は遺伝で決まる?
Sartore et al. (2026). Veterinary Sciences, 13(8), 754

この論文を一言で
猫の攻撃行動に関する26研究をまとめ、遺伝子、遺伝率、品種、性別、不妊去勢、毛色、初期経験、管理、環境との関連を整理した系統的レビューです。
報告されたのは主に観察的な関連で、攻撃を決める単独の遺伝子や属性、家庭で相性のよい性別組み合わせを示した論文ではありません。
どう調べた?
Scopus 902件、PubMed 1,920件から、2005〜2025年の英語原著を選びました。検索25研究と参考文献からの1研究、計26研究です。
研究の選別・抽出は1人が行って著者間で協議し、正式な品質・バイアスリスク評価はありません。研究デザイン、攻撃の定義、尺度が大きく異なるため、メタ解析ではなくナラティブに統合しました。
全検索式でgenetic*を必須としたため、環境だけを扱う研究は過少に含まれた可能性があります。
攻撃は一つではない
飼い主、見知らぬ人、ほかの猫、犬、保定・診察時など、対象と状況が研究ごとに異なります。威嚇・追跡・接触や、広い性格得点も同じ測定ではありません。
遺伝関連の結果
OXTR多型とroughness、OXTR近傍領域と同じ行動次元、雌猫のAR多型と見知らぬ人への攻撃との関連があり、複数の攻撃関連形質に遺伝率を報告した研究もありました。
しかし、これらは直接的な遺伝決定因子ではありません。遺伝率も、一匹の行動の何%が遺伝で固定されるかを示す数字ではありません。
品種・性別・毛色
品種差、性別・不妊去勢別、毛色別の飼い主報告はありましたが、対象、尺度、生活環境が異なり、性別の結果は一貫しません。家庭の組み合わせ成功を直接比べた研究でもありません。
毛色研究には、実際の行動ではなく、人が毛色から連想する性格を測ったものも含まれます。属性を個体のラベルや選別基準へ変えません。
主な限界
- 定義、対象、尺度、研究デザインが不均一
- 質問票・観察研究が中心
- 正式なバイアスリスク評価なし
- 1人で選別・抽出後に協議
- メタ解析なし
- 2データベース・英語文献のみ
- 遺伝必須検索で環境単独研究を拾いにくい
原著内の注意事項
Table 1のDelgadoら(2012)のDOIは先頭の1が欠けています。正しいDOIは10.2752/175303712X13479798785779です。
Fe-BARQを直接観察・専門家評価まで統合するように述べる箇所、保護猫の介入研究を“survey”と呼ぶ箇所、植物化合物が攻撃・社会的葛藤を減らす可能性へ広げる箇所もあります。原資料の範囲を越えるため、家庭向け結論には使いません。
家庭への持ち帰り
「攻撃的」とまとめず、誰が、誰へ、どこで、何の直前に、どの動作をし、その後どう離れたかを記録します。品種、性別、毛色から原因を決めません。
急な変化、接触や傷、安全を保てない状況、食事・排泄・活動の変化は、記録を持って獣医師へ相談します。
参考文献
Sartore S, Moretti R, Chessa S, Sacchi P. (2026). Genetic and Environmental Causes of Aggression in the Domestic Cat. Veterinary Sciences, 13(8), 754. https://doi.org/10.3390/vetsci13080754
猫の攻撃行動は遺伝で決まる?——26研究で見る遺伝と環境
猫の攻撃行動に関する26研究から、遺伝子、品種、性別、毛色、初期経験、環境の関連を個体予測にせず読む全5回です。