論文要約:猫の要求行動に給餌時の遊びは役立つ?——92匹・4週間の二群比較
Hoff et al. (2026). Applied Animal Behaviour Science, 300, 107017

この論文を一言で
毎日またはほぼ毎日、飼い主へ注意を求める行動がある家庭猫92匹を、食事時に非食品おもちゃを出す群とフードパズルを使う群へ分け、4週間の行動頻度を比べた研究です。
両群で多くの行動頻度は下がりましたが、無介入対照群がないため、給餌時エンリッチメントが減少の原因だったとは断定できません。二群の変化量にも有意差は検出されませんでした。
論文情報
- 著者:Ayoe Hoff、Laura Sofie Römmelmayer Lundegaard、Mathilde Luth Møller-Petersen、Søren Saxmose Nielsen、Peter Sandøe
- 掲載誌:Applied Animal Behaviour Science
- オンライン公開:2026年4月21日
- 巻・論文番号:300, 107017
- DOI:10.1016/j.applanim.2026.107017
- 種別:二群ランダム化比較試験
- ライセンス:Creative Commons Attribution 4.0 International(CC BY 4.0)
352件から102匹を選び、92匹を分析
デンマークでSNSと大学周辺のポスターを使って飼い主を募集し、352件のスクリーニング回答から102匹を選びました。対象は一世帯一匹、1歳超、不妊化済み、屋外アクセスがないか制限され、ドライフードを食べる猫です。
少なくとも一つの対象行動が毎日またはほぼ毎日あることも条件でした。子猫、多頭世帯、自由に外出する猫、ウェットフードだけを食べる猫は含まれません。
各群51匹へ無作為に割り付け、4週間を完遂した非食品おもちゃ群48匹、フードパズル群44匹の計92匹を分析しました。脱落はそれぞれ3匹と7匹でした。
比べたのは二つの能動的な介入
非食品おもちゃ群は、食事時に食べ物を使わないパズル状のおもちゃ二つを提示し、1時間後に片づけました。フードパズル群は据え置き型と可動型を使い、毎日のドライフードを段階的に食器からパズルへ移しました。
どちらの群も新しい道具と給餌時の手順を受けています。「エンリッチメントあり」と「何もしない」を比べた研究ではありません。
飼い主には別の群の存在を知らせませんでしたが、自分が使う道具は分かります。行動評価も飼い主の週次回答なので、完全な盲検評価ではありません。
評価した六つの行動
飼い主は次の頻度を毎週、五段階で回答しました。
- 夜中に鳴く、ベッドへ飛び乗るなどして起こす
- 食べ物をねだる
- 注意を求めて鳴く
- 注意を求めて前足でたたく・押す
- 飼い主が禁じていることをする
- 遊びや注意を求めて人を攻撃する
注意を求めること自体は猫と人のコミュニケーションに必要で、行動すべてが病的という意味ではありません。本研究は、飼い主が高頻度で困っていると報告した場面を扱います。
両群の平均スコアは下がった
六行動をまとめた平均スコアは、0週から4週まで両群で低下しました(いずれもp<0.0001)。p値は、観察された差が偶然だけで説明できるかを考えるための統計指標です。
21回の個別比較による偶然の当たりを抑えるため、研究はボンフェローニ補正を使い、基準をp=0.0024としました。その基準を満たした0週対4週の個別結果は、フードパズル群の「注意を求めて鳴く」「注意を求めて押す」(各p=0.0009)でした。
補正前に差が見える行動が多くても、比較回数を考えた基準では残らないものがあります。個別行動のすべてが明確に改善したとは言えません。
二群の変化量に差は検出されなかった
夜間に起こす、食べ物をねだる、鳴く、押す、禁止行動、攻撃のどれでも、4週間の変化量に二群間の有意差はありませんでした。六行動の平均スコアの群間p値は0.57です。
これは「フードパズルが非食品おもちゃより優れている証拠は得られなかった」という結果です。一方で「二つは全く同じ効果」「どちらでも交換可能」と証明する同等性試験ではありません。
道具へ関心を示さない猫もいた
非食品おもちゃ群では17/48匹、フードパズル群では5/44匹が、二つの道具のどちらにも関心を示さなかったと報告されました。据え置き型、可動型の好みも猫によって異なりました。
猫が使わないことを失敗とせず、道具への近づき方、食べる量、離れる行動を観察する必要があります。
この研究で断定できないこと
- 給餌時エンリッチメントが、何もしない場合より要求行動を減らすか
- フードパズルと非食品おもちゃに同じ効果があるか
- 4週間後も変化が続くか
- 多頭世帯、子猫、自由に外出する猫、ウェットフードだけの猫でも同じか
- どの商品、難易度、時間、給餌量が適切か
- 急な鳴き方・食べ方の変化が行動だけの問題か
高頻度行動の猫を選んだため自然に平均へ戻る可能性、研究へ参加したことで飼い主の関わり方が変わる可能性、目新しさ、家庭内の別の変化も除外できません。
暮らしへ持ち帰るなら
ごはん前の催促が気になる時は、まず鳴く時刻、食事との間隔、食べた量、遊びへの反応を数日記録します。何か試すなら一度に一つにし、前後の変化を見ます。
研究手順をまねて食事を急に全面変更する必要はありません。食べない、隠れる、攻撃、粗相、過剰な毛づくろいなどが見られたら中止します。食欲低下、体重変化、急な鳴き方の変化などがある場合は、行動だけで判断せず獣医師へ相談してください。
透明性情報
研究はコペンハーゲン大学研究倫理委員会の許可を得ています。基盤資金の提供者は研究へ影響していないと報告され、道具はTrixie社から一括割引価格で購入しました。筆頭著者は猫の行動療法士で行動クリニックを運営し、他著者は競合する利益なしと申告しています。
原著
Hoff A, Lundegaard LSR, Møller-Petersen ML, Nielsen SS, Sandøe P. Dealing with annoying cats: A randomised controlled trial of feeding-time enrichment to reduce attention-seeking feline behaviours. Applied Animal Behaviour Science. 2026;300:107017. https://doi.org/10.1016/j.applanim.2026.107017
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