毎日20:00更新
ネコフリークス大学Neko Freaks University
多頭飼い掲載 2026.06.17

論文要約:猫同士の仲よしサインと緊張サインを読む

Khoddami et al. (2024). Animal Welfare

読了 約5分中級2024年発表原文 DOI →

論文の概要

Khoddamiら(2024)は、米国とカナダの2匹飼い家庭6,529世帯を対象に、猫同士のやりとりを調べたオンライン横断調査です。参加者は、猫同士のやりとりを映した10本の動画を見て、その場面がどのくらい肯定的・否定的に見えるかを評価しました。さらに、自宅の2匹で同じような行動をどのくらい見るかも回答しています。

この論文の見どころは、猫同士の関係を「仲がよい」「仲が悪い」で止めず、行動ごとに分けている点です。アログルーミング(猫同士の毛づくろい)、一緒に寝る、遊ぶといった親和的な行動と、凝視、前足で叩く、ケンカ、資源ガーディング(食べ物や場所を守るような行動)などの緊張サインを分けて見ています。

結果として、きょうだい関係にある猫ペアでは毛づくろいし合いがより報告されやすい傾向がありました。同居期間が長いほど、一緒に寝る行動が報告されやすい傾向も示されています。一方で、トイレが1か所しかない家庭では、ケンカや前足で叩く行動のような明確な否定的行動がより報告されやすい傾向がありました。

主要メッセージ

  • 猫同士の関係は、ひとつの印象ではなく、親和的行動と緊張・対立行動を分けて見ると整理しやすい。
  • 飼い主の動画評価は、猫行動専門家5名の評価と大きくは似ていました。
  • ただし、毛づくろいや頭をこすりつける行動など、一部の親和的行動は飼い主がよりポジティブに見やすい可能性があります。
  • トイレ、食事場所、水、休息場所などの資源配置は、多頭飼いの関係を見るうえで無視できない観察ポイントです。

研究デザイン

  • 研究種別: オンライン横断質問紙調査
  • 対象: 米国・カナダの2匹飼い家庭
  • 参加世帯数: 6,529世帯
  • 対象猫数: 13,058匹
  • 動画評価: 肯定的なやりとり5本、否定的なやりとり5本の合計10本
  • 評価方法: やりとり全体、猫1の経験、猫2の経験をLikert尺度で評価
  • 専門家比較: 猫行動専門家5名が同じ動画を評価
  • 主な解析対象: 自宅で見られる肯定的行動・否定的行動の頻度と、猫の属性・家庭環境との関連

動画は、アログルーミング、一緒に寝る、頭をこすりつける、鼻を近づける、遊びといった肯定的な場面と、食べ物やキャットニップの資源ガード、凝視、前足で叩く、ケンカといった否定的な場面に分けられていました。研究者は、飼い主がこれらの場面をどう解釈するかと、自宅で似た行動をどのくらい見ているかを合わせて検討しています。

主な発見

きょうだい関係にある猫ペアでは、アログルーミングがより報告されやすい傾向がありました。長く一緒に暮らしている猫ペアでは、一緒に寝る行動がより報告されやすい傾向も示されています。血縁や同居期間は、猫同士の慣れや関係づくりに関わる可能性があります。

一方で、年齢が高い猫ペア、年齢差が大きい猫ペア、動物に向けた攻撃行動がある猫ペアでは、ケンカや前足で叩く行動のような明確な否定的行動がより報告されやすい傾向がありました。デクロー(爪抜き)された猫が含まれる家庭でも、ケンカや打撃行動が多く報告される傾向が示されています。

環境面では、トイレが1か所しかない家庭で明確な否定的行動がより報告されやすい傾向がありました。これは「トイレが1つだと必ずケンカになる」という意味ではありませんが、片方がトイレ前をふさぐ、もう片方が近づくのを避ける、使いたいときに使えないといった静かな競争が起きる可能性を考える材料になります。

興味深いのは、食事場所が1か所の家庭で一部の肯定的行動がより報告されていた点です。ただし、これは「食器は1か所に集めた方がよい」という結論ではありません。同じ場所で食べられるほど関係が落ち着いている家庭が含まれていた可能性もあります。環境づくりとしては、猫が選べるように複数の食事・水・休息場所を用意する考え方が基本です。

また、飼い主と専門家の動画評価は全体として似ていました。ただし、アログルーミングや頭をこすりつける行動では、飼い主の方が専門家よりポジティブに評価する場面がありました。かわいく見える行動でも、片方が固まっていないか、逃げ道があるか、終わったあとに避けていないかまで見ると、読み違いを減らせます。

この研究で断定できないこと

この研究は横断調査です。そのため、血縁関係、同居期間、トイレ数、年齢差などと行動の関連は見られても、「この条件が原因で仲よくなる」「この条件が原因でケンカになる」とは断定できません。

また、回答は飼い主の記憶や主観的な解釈に影響されます。動画評価も調査用に選ばれた短い場面であり、実際の家庭では部屋の広さ、猫の性格、導入手順、健康状態、過去の経験などが重なります。

デクローについても、デクローそのものがすべての問題行動の直接原因だと読むのではなく、痛み、行動の変化、過去の生活環境などが重なっている可能性を含めて慎重に扱う必要があります。

数値で見るポイント

  • 参加世帯は6,529世帯、対象猫は13,058匹でした。
  • 評価動画は10本で、肯定的なやりとり5本、否定的なやりとり5本でした。
  • 猫行動専門家5名も、同じ動画をLikert尺度で評価しました。
  • 参加世帯の59.1%は食事場所が1か所、57.1%はトイレ設置エリアが1か所でした。
  • 肯定的行動として、アログルーミング、一緒に寝る、頭をこすりつける、鼻を近づける、遊びが扱われました。
  • 否定的行動として、凝視、食べ物やキャットニップの資源ガード、前足で叩く、ケンカが扱われました。

暮らしへのヒント

  • 猫同士の関係を「仲よし」「仲悪し」の二択で決めず、行動の種類と頻度で観察する。
  • 毛づくろいし合い、一緒に寝る、一緒に遊ぶといった肯定的サインを日常的に確認する。
  • 凝視、進路妨害、片方が避ける、片方だけが場所を譲るなど、静かな緊張サインも見逃さない。
  • トイレ、食器、水、高所スペース、隠れ場所は複数用意し、1か所に集めすぎない。
  • 一緒に食べられる関係でも、別々に使える選択肢を残す。
  • 年齢差がある場合は、遊びたい猫と休みたい猫の逃げ道を分ける。
  • 急に攻撃や回避、トイレ問題が増えた場合は、環境だけで判断せず、痛みや体調不良も含めて獣医師に相談する。

この論文のテーマを深く学ぶ

2匹の猫、仲よく暮らせる?——多頭飼いの見方と整え方

2匹の猫の関係に何が影響するかを調べた研究をもとに、全5回で多頭飼いの見方を整理します。仲よしサインと緊張サイン、きょうだい・同居期間・年齢差との関わり、トイレや食器の置き方、新しい猫を迎える前の導入まで扱います。

開講中講座を見る →
医療情報の取り扱い

本サイトの記事は、学術論文をAI技術を用いて要約・翻訳したものであり、獣医師による診断・治療に代わるものではありません。愛猫の健康状態に不安がある場合は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。