「1日6〜7回」は高齢猫の目安?
自由給餌研究で観察された6〜7回を、高齢猫の推奨回数へ変換できない理由と研究上の食事定義を整理します。

導入会話
マロン学長「研究で高齢猫が6〜7回食べたなら、家でもその回数に分ければいいのかな?」
ジジ助手「その数字は給餌指示じゃないんだ。俺も最初そう読みそうになったけど、まず何を一回と数えたのか確かめようぜ。」
この回でわかること
- 観察された回数と推奨回数の違い
- 「食事」の研究上の定義
- 平均値を一頭の目標にしない理由
猫はもともと「少しずつ、何度も」食べる動物
論文の背景には、猫の食べ方の由来が書かれています。猫の祖先であるリビアヤマネコは、小さな獲物を一日に何度も捕まえて食べる単独のハンターでした。猫の胃は犬に比べて小さく、およそ300〜350mLしかないため、少量を何度も食べる方が体に合っています。
家庭で人から食事をもらうようになっても、この傾向は残っていると考えられています。過去の研究では、24時間に12〜20回、1回5〜7gほど食べるという報告や、明け方と夕方に食べる回数が増えるという報告がありました。ただし、これらは実験施設で暮らす猫や少数の猫を対象にしたもので、家庭の高齢猫でどうなるかは、これまで大きな研究で確かめられていませんでした。
研究では猫が自分で食べた回数を数えた
Eyreら(2026)の研究では、7歳以上の健康な家庭猫が24時間自由に食べられる状態で、食器へ来て2g以上食べた一訪問を一回と数えました。主要測定日の平均は、条件によって6.0〜7.2回でした。
研究者が決めた6〜7回を与えたのではなく、猫が自分で食べた訪問回数を数えた数字です。
一回あたりの量は、ドライでおよそ11g、ウェットで21〜24gでした。カロリーに直すと、ドライで約40kcal、ウェットで約20kcalです。「一回の食事」といっても、人の食事のようなまとまった量ではなく、少しずつつまむような食べ方だったことが分かります。
マロン学長「一回が11gなら、ぼくがちょっとつまむのも『一回』に入るんだね。」
ジジ助手「そうなんだ。だから回数だけ見て『多い』『少ない』と決めると、見誤るんだよ。」
数え方が違えば回数も違う
著者らは考察で、過去の研究との回数の違いにも触れています。実験施設の猫にドライフードを自由に与えた研究では約8回、もっと古い研究では16回、ウェットを与えた12匹の研究では12〜14回と報告されていました。著者らは、古い研究は「一回」の定義がなく2g未満も数えていたこと、代謝ケージという狭い環境で食べ物がすぐそばにあったこと、8匹や12匹と少数だったことを挙げ、直接比べられないとしています。
何を一回と数えるか、どんな場所で、何匹で調べたかによって、回数は倍近く変わります。「猫は一日に何回食べる」という数字を見た時は、その定義を確かめる必要があります。
6回と7回の差は「意味がある差」か
さらに著者は、6回と7回の統計差が生物学的に意味を持つか疑問だと記しています。134匹という大きな標本では、小さな差でも統計的には「差あり」と出やすくなります。著者らは、この差が有意になったのは主に猫の数が多かったためだろうと考えています。
平均値には猫ごとのばらつきもあります。家庭で回数を合わせる根拠にはなりません。
「高齢猫だから回数が変わる」も示していない
この研究は、7〜11歳の群と12歳以上の群で食事回数を比べましたが、差は見つかりませんでした。性別による差もありませんでした。「年を取ると食べる回数が増える」「減る」という話は、この研究からは出てきません。
高齢猫の食欲や食べ方が変わることは他の研究で指摘されていますが、この研究に参加したのは健康とされた猫だけです。持病や口の問題がある猫の食べ方は、別に考える必要があります。
今日からできること
- 食器へ来た回数だけで良し悪しを決めない
- 一日の総量と普段との差も同時に記録する
まとめ会話
マロン学長「回数をまねするより、数え方と条件を見るんだね。」
ジジ助手「その通り。俺なら『7回食べさせなきゃ』って焦りそうだけど、そこが落とし穴なんだ。次は各猫が三条件を経験した設計を見ようぜ。」
次回予告
クロスオーバー設計が個体差をどう扱ったか確認します。