134匹が三条件を試したクロスオーバー
同じ猫がドライ、ウェット、混合を経験した短期クロスオーバー設計の強みと一般化の限界を解説します。

導入会話
マロン学長「猫ごとに食べ方が違うなら、別々の猫を比べても難しそう。」
ジジ助手「そこで同じ猫がドライ、ウェット、混合を全部経験したんだ。自分と自分を比べる設計だぜ。」
この回でわかること
- 対象になった猫の条件と人数
- クロスオーバー設計の強みと限界
- 自動給餌器で何を測ったか
150匹を募集し、134匹を解析した
英国で2019年11月から12月にかけて、7歳以上の猫150匹を募集しました。順応の問題や飼い主の事情で15匹が最初の測定前に離脱し、135匹が全期間を終えました。データが繰り返し不規則だった1匹を除き、最終解析は134匹、三条件すべての完全データは126匹でした。
内訳は7〜11歳が70匹、12歳以上が64匹で、大半は短毛の雑種でした。参加できたのは単頭飼育で健康とされた猫です。飼い主が「食いしん坊」「好き嫌いが強い」と感じる猫、首輪が苦手な猫、臆病で変化に慣れにくい猫、病気で治療中の猫、口や歯に問題がある猫、特別食の猫、妊娠・授乳中の猫は除外されました。すべて室内飼いか、庭までの限られた外出だけの猫です。
よく管理された比較であっても、持病や食欲変化がある一般的な高齢猫へそのまま広げられません。
何匹いれば差が見えるか、先に計算していた
研究者は始める前に、1日1回の食事回数の差と、1日20kcalの摂取エネルギーの差を見つけるには何匹必要かを計算していました。150匹なら十分な検出力がありましたが、離脱で135匹、完全データ126匹に減ると、食事回数の差を見つける力は下がりました。著者らはこの数字を論文に明記しています。
匹数が減っても結論が変わったわけではありませんが、「見つからなかった差」を「差がない証明」と読まないための材料になります。
同じ猫が三条件をすべて経験した
各猫は三条件を異なる順序で経験し、順序は六通りに均衡させました。同じ猫の中で比べると、体重や性格といった猫ごとの違いが結果に混ざりにくくなります。著者らはこれを「各猫が自分自身の対照になる」設計と説明しています。
順序をそろえたのは、後の条件ほど体重が増えたり、前の食事の影響が残ったりする偏りを減らすためです。
各条件は4日の順応と2日の主要測定です。同じ猫の中で比較できるのは強みですが、一条件6日は短く、新しい食事への警戒や一時的な興味が残る可能性があります。著者らもこの2日間が短いことを限界として認めています。ただし、6日分すべてを使った二次解析でも同じ傾向だったため、慣れの影響は大きくなかったと考えています。
マロン学長「別の猫を比べるより、同じ猫で比べた方が違いが見えやすいんだね。」
ジジ助手「そうなんだ。俺みたいに食べ方に癖がある猫でも、自分の中で比べれば癖ごと差し引けるってわけだぜ。」
首輪のタグで開く給餌器が記録した
食器には、猫の首輪につけたタグで開く自動給餌器を使いました。ふたが閉まる仕組みで、食べた重さと時刻が自動で記録され、アプリを通じて研究者に送られます。飼い主は研究前に20分の講習を受け、猫は本番の前に14日間、いつもの食事でこの給餌器に慣らされました。
ウェットフードは約8時間ごとに新しいものへ替え、水は食器とは別に置いて、飼い主が重さを量りました。研究の間、飼い主は技術的な相談ができる窓口を使えました。
人の目で数えるより正確に記録できる一方、家庭ごとに飼い主の在宅時間や補充のタイミングは違い、そこは統一されていません。
今日からできること
- 「134匹」と対象条件をセットで読む
- 短期の反応を長期的な食べ方と同一視しない
まとめ会話
マロン学長「同じ猫で三つを試したけど、健康な猫だけで、期間も短いんだね。」
ジジ助手「その二つを覚えておくと、次の数字を大げさに読まなくて済むぜ。」
次回予告
三条件の回数と摂取エネルギーを、言える範囲だけ比べます。