食べ物が反対へ移った——猫はどちらを探す?
食べ物をAへ2回隠した後、見える形でBへ移すと、猫はどちらを探すのでしょうか。家庭猫38匹のA-not-B課題から、前の成功場所を選ぶ固着と、記憶力だけでは説明できない探索の仕組みを学びます。

導入会話
マロン学長「おやつがいつもの場所になくても、猫は前の場所を先に探すことがあるよ。場所を覚えているからかな。」
いち教授「直前に成功した選択を繰り返すことはあるね。でも記憶が良い、悪いだけで説明できるかな。」
マロン学長「人の呼びかけや、場所が変わった時の注意も関係しそうだね。」
この回でわかること
- A-not-B課題のA・Bが表すもの
- 前の場所を選ぶ固着を能力不足にしない理由
- 38匹の実験で調べた二つの条件
Aへ2回、Bへ2回、最後にA
PongráczとOnoferは、二つの不透明な遮蔽物を40cm離して置き、食べ物をA-A-B-B-Aの順に隠しました。猫は隠す場面を見た後、一方を選びます。正しければ食べ物を受け取り、誤れば食べ物は回収されました。
最初のA1とA2で同じ場所を続けた後、B3で初めて反対側へ移ります。Bにあるのを見たのにAを選ぶことを、研究では固着、A-not-B誤反応としました。B4でもB、A5で再びAへ戻ります。
マロン学長「一番大きな切り替えは、Aが続いた直後のB3なんだね。」
いち教授「そう。結果もB3に集中して現れたよ。」
誤反応は「忘れた」と同じではない
Aを選んだからといって、Bへ移った場面を見ていなかった、場所を覚えられない、と一つに決められません。直前にAで食べ物を得た経験、体をAへ向ける習慣、人への注意、課題への動機、刺激の重なりなどが関わり得ます。
二択で集団の正答が偶然水準という結果も、全ての猫が誤ったという意味ではありません。正答する猫と誤る猫がいて、集団として50%と統計的に区別できなかったという意味です。
この研究は猫の賢さを順位づける試験ではなく、人のコミュニケーションが探索の切り替えとどう結びつくかを調べる課題です。
明示するか、単調に話すか
明示条件では、人が猫の名前を呼び、「見て」と言い、猫を呼ぶ音を使い、目が合うまで注意を引きました。そのまま話しながら食べ物を隠します。
非明示条件では、隠す間に短い詩を単調に読みました。どちらも人の声と隠す動作があります。違いは「あなたへ伝えている」と強く示す話し方です。
さらに、隠す人を見知らぬ実験者と飼い主で比べました。つまり、実演者への慣れと、呼びかけの明示性を組み合わせた四条件です。
家庭の仕草研究とは言い切れない
旧タイトルは「飼い主の仕草」と表していましたが、研究で操作したのは仕草単独ではありません。名前、言葉、呼び音、目線、食べ物を動かす動作が組み合わさっています。
どの要素が効いたかは分けられません。また、家庭の日常的な合図を観察した研究でもありません。A-not-B課題の中で、複合シグナルに対する探索を比べたと捉えます。
今日からできること
- 猫が前の選択を繰り返しても、記憶力の良し悪しを決めない
- 人の合図を考える時、声・目線・手の動きを分けて記録する
まとめ会話
マロン学長「Aを選んでも、Bを覚えられないと決めるのは早いんだね。」
いち教授「うん。直前の成功、注意、人の複合シグナルが重なる課題だよ。」
マロン学長「次は、38匹がどう選ばれたかを見てみよう。」
次回予告
候補68匹から最終38匹へ。21匹の途中離脱、条件ごとの人数、475試行の評価方法を確認します。