10匹・12行動をどう学習した?——論文を深く読む
家庭猫10匹へ胸側加速度計を装着した研究の方法を深掘りします。8日間の記録、動画ラベル、1秒ごとの26特徴量、SOMの学習条件と、原著内で一致しない総記録時間を確認します。

導入会話
マロン学長「高い正解率を見る前に、どんな猫とデータだったか知りたいな。」
いち教授「いい順番だね。対象、装着、正解ラベル、分け方を確認すると数字の意味が見えるよ。」
マロン学長「論文の時間にも合わない所があったんだよね?」
いち教授「そこも推測で埋めず、書かれた数字を並べて確かめよう。」
この回でわかること
- 10匹の条件と8日間の記録設計
- 1秒区間から26特徴量を作る流れ
- 原著内の総記録時間が一致しない点
一地域の家庭猫10匹
調査は2019年2〜4月、オーストラリアのサンシャインコースト地域で行われました。10匹は雄6匹、雌4匹、年齢1.5〜12歳、体重2.8〜8.4kgです。
加速度計は市販ハーネスの胸骨付近へ固定されました。装置は11gで、50Hz、±8g、13ビットで三方向の動きを記録します。研究前に4匹・4か月の予備試験を行い、胸側を選びました。
各猫は8日間、CatBibあり・なしを4日ずつ経験し、順序は無作為でした。装備は合計34.1g、体重の1.2%以下です。
対象は多様な猫全体ではなく、一地域で屋外を自由に動く家庭猫10匹です。
動画から103時間分の正解を作った
猫は屋外を自由に動き、60fpsの映像も記録されました。動画とセンサーの時刻を合わせ、確認できた秒へ12種類のラベルを付けました。
結果本文はCatBibなし212,789秒、あり159,724秒(合計約103.48時間)で、103.47時間と整合します。ただし図4・5はBibなし231,570秒、図4はあり175,989秒と記載します。
各1秒の三軸値を、平均、標準偏差、範囲、軸間相関など26特徴量へまとめました。36通りの格子を試し、7×7のSOMを100回学習させました。
SOMは似た特徴の秒を近くへ配置し、人が各領域へ行動名を割り当てます。評価には動画から作った正解が欠かせません。
1秒単位の分類は、50Hzの生波形、26特徴量、動画ラベル、人による領域の命名を重ねた結果です。
マロン学長「装置一つだけじゃなく、動画と人の確認まで含む研究なんだ。」
学習用と評価用をどう分けたか
CatBibなしのデータから100〜100,000秒の35種類を無作為に抜き、各10回反復しました。代表的な比較は20,000秒で学習し、残る約192,000秒を評価しています。
分けた単位は猫ではなく、同じ10匹から得た1秒区間です。同じ猫の秒が学習側と評価側へ入り、近い時刻の区間が両側へ入る可能性もあります。
2,304時間は算数と合わない
原著は各猫を8日、約192時間記録したとし、対象を10匹としています。それなら総時間は10×192で1,920時間です。しかし本文には総記録時間2,304時間と書かれています。2,304時間は192時間の12匹分に相当しますが、対象は10匹です。
追加の2匹や延長記録の説明はありません。どの数字が誤りか決める根拠がないため、1,920時間へ書き換えたり、12匹と解釈したりはしません。
原著の記述が一致しない時は、もっともらしい数字へ直さず、不一致と根拠を明示します。
ラベル数の本文と図キャプションも一致しません。どちらも推測で統一せず注意事項とします。
今日からできること
- 対象数、日数、総時間を掛け算で照合する
- 学習と評価を猫単位で分けたか、秒単位で分けたかを見る
まとめ会話
マロン学長「10匹の胸側を50Hzで記録し、動画で約103時間分の正解を付けたんだね。」
いち教授「その1秒ごとに26特徴量を作り、SOMで似た動きをまとめたよ。」
マロン学長「2,304時間は10匹×8日と合わないから、勝手に直さず残す。」
いち教授「そうだね。次は99.6%という数字の内側を見よう。」
次回予告
第3回は、正解率、感度、適合率、特異度を分け、同じ猫の区間分割が評価へ与える影響を考えます。
参考文献
- Galea N, et al. Scientific Reports. 2021;11:13566. https://doi.org/10.1038/s41598-021-92896-4