2,822件から26研究をどう選んだ?
検索式、選別・抽出、品質評価なし、メタ解析なしという系統的レビューの条件を確認します。

導入会話
マロン学長「系統的レビューなら研究を全部集めたの?」
いち教授「検索先、言語、検索語の範囲があるんだ。何を集められて、何を集められなかったかを分けよう。」
この回でわかること
- 検索の手順と採用された26研究
- 品質評価と統合をしなかった理由
- 検索語が結果に与えた偏り
二つのデータベースから
レビューはPRISMA 2020という報告の指針に従い、Scopus(2025年11月)とPubMed(2025年12月)を検索しました。対象は2005〜2025年に英語で発表された原著論文です。検索式は四つで、「猫の行動」と「遺伝」、「猫」「攻撃行動」「遺伝」などの組み合わせでした。
Scopus 902件、PubMed 1,920件から25研究を選び、参考文献から1研究を追加しました。ワイルドカードを使った検索語は、catsだけでなくcategory(カテゴリー)やcatabolism(異化)といった無関係な語も拾ったため、最初の件数は大きくなっています。二段階で無関係な文献を除き、さらにレビュー論文、重複、野生のネコ科や家畜化の起源だけを扱う研究を除いて、26研究が残りました。
26研究の顔ぶれ
採用された研究は2008〜2025年に発表され、欧州が12件(うちフィンランド5件)、米国8件、日本3件、オーストラリア・イスラエル・トルコが各1件でした。質問票と観察研究が中心で、遺伝子との関連を調べた研究、実験的な行動研究、症例報告は少数です。
2017年に開発された猫の行動を測る飼い主回答式の質問票(Fe-BARQ)は、採用研究のうち4件で使われていました。ほかには直接観察、実験課題、臨床評価などが使われ、犬用の性格質問票を猫向けに改変した研究も2件ありました。
マロン学長「同じテーマなのに、測り方がこんなにばらばらなんだね。」
いち教授「だから著者らは、数字を足し合わせることをあきらめて、言葉でまとめる方法を選んだんだ。」
品質評価と統合をしなかった
選別・抽出は1人で、正式なバイアスリスク評価とメタ解析はありません。著者らは、研究の設計、目的、行動の測り方、結果があまりに違うため、各研究の質を統一した基準で評価することも、数値を統合することもできなかった、と説明しています。その代わり、結果を文章で並べて整理する「ナラティブな統合」を行いました。
これは手抜きではなく、材料の性質に合わせた判断です。ただし、質を評価していないということは、弱い研究と強い研究が同じ重さで並んでいるということでもあります。著者ら自身、この点を証拠全体の強さの解釈に含めるよう求めています。
検索語が結果を偏らせた
全検索式がgenetic*を必須としたため、環境だけの研究は拾いにくい設計でした。レビューの題名は「遺伝的・環境的原因」ですが、環境要因だけを調べた研究は、そもそも検索に引っかからなかった可能性があります。著者らもこれを限界として認めています。
英語の文献に限ったこと、二つのデータベースしか使わなかったことも、見落としの可能性を残します。
このレビューは倫理審査を必要としない文献研究で、外部資金はなく、著者らは利益相反なしと申告しています。新しいデータは作られておらず、既存の研究を整理したものです。
見つからなかった研究と、検索範囲の外だった研究を区別します。
今日からできること
- レビューの検索先、言語、期間、検索語を見る
- 採用数と一緒に品質評価・統合方法を確認する
まとめ会話
マロン学長「26研究は『見つかった範囲』で、環境の研究は少なめに入っているんだね。」
いち教授「その前提で、次は一番気になる『遺伝子』の話を読もう。」
次回予告
遺伝子関連と遺伝率を個体の未来へ変えずに読みます。