毎日20:00更新
ネコフリークス大学Neko Freaks University
講座206第3回 / 全5回

「攻撃遺伝子」は見つかった?

OXTR・ARとの関連と遺伝率を、直接原因や個体の未来予測へ変えずに読みます。

いち教授
いち教授
講座206

導入会話

マロン学長「遺伝子が関連したなら、攻撃的になる猫が分かる?」

いち教授「関連と直接原因は別なんだ。このレビューが見つけたのは、手がかりであって答えではないよ。」

この回でわかること

  • 報告された遺伝子との関連
  • 「遺伝率」の意味
  • 集団の結果を個体に当てないこと

見つかった関連

OXTR、ARとの関連や、複数の攻撃関連形質の遺伝率が報告されました。OXTRはオキシトシン(人との絆や社会行動に関わるホルモン)の受け取り手を作る遺伝子で、その型の違いが飼い主評価の「roughness(荒っぽさ)」と関連したという報告がありました。ARはアンドロゲン(男性ホルモンの仲間)の受け取り手を作る遺伝子で、雌猫での型の違いが見知らぬ人への攻撃と関連したという報告です。

家畜化に関わる遺伝子群にゲノム上の信号が見つかったという報告もありますが、著者らはこれを「反応性へ間接的に関わる可能性」と表現しています。特定のゲノム領域が攻撃行動を直接決めていると示した研究はありませんでした。

「roughness」は攻撃そのものではない

ただし、roughnessは広い性格次元で、遺伝率は一匹の行動が遺伝で固定される割合ではありません。roughnessは飼い主が答えた質問票から作られた性格の軸で、噛む・引っかくといった特定の攻撃行動を測ったものではありません。遺伝子との関連が見つかったのは、この広い軸に対してです。

マロン学長「『荒っぽい』と『攻撃的』は、似ているけど同じじゃないんだね。」

いち教授「そうだよ。研究が測った言葉を、そのまま使い続けることが大切なんだ。」

遺伝率は個体の運命ではない

2019年の研究は、複数の攻撃に関わる形質に中〜高い遺伝率を報告しました。遺伝率は、集団の中で見られる行動のばらつきのうち、どれだけが遺伝的なばらつきで説明できるかを示す数字です。「この猫の攻撃行動の何割が遺伝で決まっている」という意味ではありません。

同じ遺伝率でも、環境が変わればばらつきの内訳は変わります。遺伝率が高い形質でも、環境によって行動が大きく変わることはあり得ます。著者らも、遺伝率は個体の行動が遺伝子だけで決まることを意味しない、と明記しています。

多くの遺伝子と環境が関わる

集団で見えた遺伝的なばらつきを、個体の運命や選別へ使いません。レビューも複数遺伝子と環境が関わる多因子性と結論づけています。

著者らの言葉では、攻撃行動は「単独の決定因子ではなく、遺伝的素因と環境の相互作用で生じる多因子性の表現型」です。特定の遺伝子の型を調べても、その猫が攻撃的になるかは分かりません。遺伝子の研究が示しているのは、猫によって行動の出やすさに生まれつきの差があるかもしれない、というところまでです。

家庭でこの回を使うなら、「うちの猫は生まれつき攻撃的だから仕方ない」という結論を出さないことです。生まれつきの差があるとしても、それが表れるかどうかには環境が関わります。

レビューは、遺伝の研究がまだ少ないことも指摘しています。26研究のうち遺伝子との関連を直接調べたものは少数で、多くは飼い主質問票や観察でした。著者らは今後、攻撃の標準的な定義と測り方、行動・遺伝・環境のデータを合わせた研究、同じ猫を長く追う研究、仕組みを調べる研究が必要だとしています。

今日からできること

  • 「遺伝だから」と書かず、実際の相手・状況・動作を書く
  • 遺伝率を個体の変えられない割合として読まない

まとめ会話

マロン学長「遺伝子の研究はあるけど、それで猫の未来が決まるわけじゃないんだね。」

いち教授「その通り。次は、もっと身近な『品種・性別・毛色』の話を読もう。ここも同じ落とし穴があるんだ。」

次回予告

品種・性別・毛色の集団差を相性予測にしない理由を読みます。

← 第2回講座トップ第4回 →
医療情報の取り扱い

本サイトの記事は、学術論文をAI技術を用いて要約・翻訳したものであり、獣医師による診断・治療に代わるものではありません。愛猫の健康状態に不安がある場合は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。