実験室ではなく、いつもの部屋で調べた理由
猫の愛着を調べるテストが、なぜ慣れた部屋へ持ち込まれたのかを整理する第1回。猫が慣れない場所を苦手とする理由と、この研究の対象を確認します。

導入会話
マロン学長「猫が飼い主のこと、どれくらい頼りにしてるかって、どうやって調べるんだろう。」
いち教授「昔から使われているのは、慣れない部屋で、慣れた人と離れたり会ったりする様子を見る方法だよ。子どもや犬の研究で育ってきた方法なんだ。」
マロン学長「慣れない部屋……猫、それ苦手そうじゃない?」
いち教授「その通りなんだ。今日は、研究者がその問題をどう扱ったかから始めよう。」
この回でわかること
- 猫が慣れない場所でのテストを苦手とする理由
- テストを「猫が暮らす部屋」へ持ち込んだねらい
- この研究が対象にした猫と、記録した行動
慣れない部屋では、猫の普段が見えにくい
慣れない部屋に慣れた人と入り、途中で離れたり戻ったりする様子を観察するテストは、もともと人の子どもの研究で作られ、その後、犬などにも使われてきました。
ただ、猫では事情が違います。ある研究では、慣れない部屋に慣れるためのテストに、犬は初回で全頭が通ったのに対し、猫は初回で通ったのが約4割でした。残りの猫は食べ物にも人にも反応しませんでした。回数を重ねても、3回目の時点でまだ約4割の猫が通らないか、途中でやめています。
猫を対象にした過去の愛着テストでも、テストの間ずっと隠れてしまい、最後まで部屋に慣れなかった猫を除外せざるを得なかった例があります。
マロン学長「隠れてる猫の行動だけ見て、いつもの様子って言われても困っちゃうね。」
いち教授「そうだね。だから今回の研究者は、猫を場所に合わせるのではなく、テストの方を猫の暮らす場所へ持っていったんだ。」
いつもの部屋に、人が出入りする形にした
Kappelら(2025)は、テストを猫が普段過ごしているリビングやシェルターの部屋で行いました。「知らない部屋」ではなく「知らない人」を、猫にとっての新しい出来事として持ち込む形です。
対象はドイツで集められた82匹の猫と、その主な世話をする人のペアです。家庭で暮らす猫が67匹、シェルターで暮らす猫が15匹でした。全頭が健康で、同じ環境に3か月以上暮らしていることが参加条件です。同じ相手との関係が、ある程度落ち着いた状態で測るためです。
テストは3分間の場面を5つ続ける形で、すべてビデオに記録されました。記録した行動は7種類あります。探索、遊び、ドアのそばで過ごす、じっとしている、体の接触は「長さ」で測り、人に近づく・避ける、鳴く・ゴロゴロは「回数」で数えました。
ビデオを見て採点したのは訓練を受けた4人です。判定のずれが5%を超える間は、基準をすり合わせる作業が繰り返されました。
今日からできること
- 猫の様子を見るときは、場所が変わっていないかを先に確かめる
- 慣れない場所での反応を、その猫の性格として受け取らない
- 動物病院や来客のあとは、いつもの環境に戻ってから様子を見る
まとめ会話
マロン学長「テストの場所を変えるだけで、見えるものが変わるんだね。」
いち教授「うん。猫は場所の影響を強く受けるからね。どこで見た行動なのかを、いつもセットで考えよう。」
マロン学長「次は、実際に何が見えたのかを知りたいな。」
いち教授「次回は、慣れた人が部屋を出た時と戻った時の変化を見ていこう。」
参考文献
- Kappel I, Materne B, Gansloßer U. Impact of Living Environment on Attachment Behaviour in Domestic Cats from Private Homes and Shelters. Animals. 2025;15(24):3521. https://doi.org/10.3390/ani15243521