離れた時と戻った時、猫の行動はどう動いたか
慣れた人が部屋を出た場面と戻った場面で、猫の行動がどう変わったかを見る第2回。ドアのそばで過ごす時間と遊びの変化、そして読み取りの限界を整理します。

導入会話
マロン学長「留守番のあいだ、猫って何してるんだろうって、いつも気になるんだ。」
いち教授「今回の研究は、まるまる留守番を見たわけではないけれど、慣れた人が部屋を出た3分間を記録しているよ。」
マロン学長「3分でも、何か変わるものなの?」
いち教授「変わったよ。特に、猫が部屋のどこで時間を過ごすかがはっきり動いたんだ。」
この回でわかること
- 慣れた人が出ていくと、猫はドアのそばで過ごす時間が増えた
- 慣れた人が戻ると、ドア際の時間が減り、遊びが増えた
- 場面が進むほど反応が減るという、読み取り上の注意点
知らない人と2匹きりになった場面
テストは3分間の場面を5つ続けます。3番目は、慣れた人が部屋を出て、知らない人と猫だけが残る場面です。
この場面では、最初の場面と比べて、ドアのそばで過ごす時間が約1.9倍になりました。同時に、部屋の中を見て回る探索の時間は短くなりました。
ドアのそばにいる、ドアの方を見つめる、という行動は、出ていった相手を探している行動として読まれます。そして探索が減ったことについて、研究者は「安心できる相手がそばにいてこそ、猫は落ち着いて周りを調べられる」という見方を示しています。
マロン学長「安心できる人がいなくなると、探検どころじゃないってことか。」
いち教授「そう受け取れる結果だね。猫にとって、慣れた人が場を落ち着かせる役割を持っていた可能性がある。」
慣れた人が戻った場面
4番目は、慣れた人が部屋に戻ってくる場面です。ここでは逆の動きが見られました。ドアのそばで過ごす時間は最初の場面の約0.6倍まで減り、遊びの時間は約1.6倍になりました。
遊びは、落ち着いた状態でないと出にくい行動だと考えられています。ドア際の時間が減って遊びが増えたという組み合わせは、慣れた人が戻ったことで猫の状態が変わったという読み方と、矛盾しません。
ただし、後半ほど反応は小さくなっていた
一方で、注意しておきたい結果もあります。体の接触の長さや、人に近づく回数は、場面が進むほど減っていきました。5つの場面のうち、いちばん多かったのは最初の場面です。
著者自身も、テストが進むにつれて猫が慣れたり疲れたりした影響、つまり場面の順番による影響を、この研究の限界として挙げています。今後は場面の順番を入れ替えて確かめるべきだとも書かれています。
ですから、「再会したから接触が増えた」という形では読めません。この研究で確かめられたのは、場面によって猫の過ごし方が変わったことと、その変化の方向です。
論文を深く読む
行動の記録は線形混合モデルで分析し、正規性の仮定が崩れた指標(遊び、ドア際の時間、体の接触)は対数変換したうえでロバストモデルとも比較しています。ビデオ判定は訓練を受けた4人が行い、判定のずれが5%を超える間はすり合わせを続けました。詳しい数値は論文要約ページで確認できます。
今日からできること
- 出かける前後の猫の様子を、玄関周辺だけでなく部屋全体で見る
- 帰宅後すぐに構いすぎず、猫が動き出すかどうかを待って見る
- 「甘えてこない=平気」と決めず、居場所の選び方の変化に目を向ける
まとめ会話
マロン学長「ドアの前にいる時間で、猫の気持ちが少し見えるんだね。」
いち教授「行動の一つだけで決めないことが大事だよ。ドア際と探索と遊び、いくつか合わせて見るとつかみやすい。」
マロン学長「次は、暮らしている場所での違いを知りたいな。」
いち教授「次回は、家庭の猫とシェルターの猫を比べた結果を見よう。」
参考文献
- Kappel I, Materne B, Gansloßer U. Impact of Living Environment on Attachment Behaviour in Domestic Cats from Private Homes and Shelters. Animals. 2025;15(24):3521. https://doi.org/10.3390/ani15243521