家庭の猫とシェルターの猫、過ごし方が違って見えた
家庭で暮らす猫とシェルターで暮らす猫の違いを見る第3回。じっとしている時間、探索、ゴロゴロの回数の差と、その読み方を整理します。

導入会話
マロン学長「シェルターの猫って、緊張してじっとしてるイメージがあるなあ。」
いち教授「多くの人がそう思うだろうね。でも今回の結果は、その予想とは逆だったんだ。」
マロン学長「えっ、逆?」
いち教授「うん。じっとしている時間が短かったのは、シェルターの猫の方だったよ。」
この回でわかること
- シェルターの猫は、じっとしている時間が短かった
- 研究者は、これを刺激の量の違いとして読んでいる
- ゴロゴロの回数の差は、良し悪しを決められない
いちばん大きかった差は「じっとしている時間」
シェルターで暮らす猫は、家庭で暮らす猫より、じっとしている時間が平均で約39秒短くなりました。3分間の場面での差ですから、小さくありません。実際、この差は今回の分析全体でいちばん強く出た違いでした。部屋の中を見て回る探索の時間も、シェルターの猫の方が長い傾向がありました。
ここで気をつけたいのは、「よく動く方が元気」と読まないことです。研究者の説明はむしろ逆向きです。
家庭は刺激が多く、変化に富んだ場所です。人が動き、音がして、においも変わります。猫はそのなかで、休んだり眠ったりして受け取る情報を減らす時間を取りやすい。一方でシェルターは日課が決まっていて、変化が少ない場所です。だからこそ、新しい出来事が起きたときの反応が大きく出やすいのではないか、という読み方が示されています。
マロン学長「ずっと同じ毎日だと、ちょっとしたことが大事件になっちゃうんだね。」
いち教授「そういう見方だね。動きの多さは、その場所の刺激の量とセットで考えたい。」
遊びは少なめ、でも確かな差とはいえない
遊びの時間は、シェルターの猫の方が短めでした。ただし、これは統計的に確かな差とはいえない結果です。
それでも研究者は、この傾向を気にかけています。遊びは、落ち着いた状態でこそ出やすい行動とされてきました。過去の研究では、猫は慣れた相手とは遊びやすく、知らない相手は避けやすいことも報告されています。人の入れ替わりが多い施設では、遊びが出にくくなる可能性があるという指摘です。
ゴロゴロは多かったが、意味は一つに決まらない
ゴロゴロの回数は、シェルターの猫が家庭の猫の約3.3倍でした。1場面あたりの推定回数で、家庭が約1.7回、シェルターが約5.8回です。
ただし、ゴロゴロの意味は研究の中でも定まっていません。心地よさの表れとして読む立場もあれば、自分を落ち着かせるための行動として読む立場もあります。出産時のように、つらい場面でもゴロゴロは出ます。この論文でも両方の可能性が並べて書かれており、どちらかに決められていません。
今日からできること
- よく動く・じっとしているを、そのまま元気の指標にしない
- 猫の様子を見るときは、その場所の刺激の量も一緒に考える
- ゴロゴロだけで「安心している」と結論づけず、姿勢や居場所も合わせて見る
まとめ会話
マロン学長「同じ行動でも、どこで暮らしているかで意味が変わってくるんだ。」
いち教授「そうだね。行動は猫だけのものじゃなくて、猫と場所のあいだに出てくるものなんだ。」
マロン学長「じゃあ、外に出られるかどうかでも変わるのかな?」
いち教授「いい質問だね。次回はそこを見ていこう。」
参考文献
- Kappel I, Materne B, Gansloßer U. Impact of Living Environment on Attachment Behaviour in Domestic Cats from Private Homes and Shelters. Animals. 2025;15(24):3521. https://doi.org/10.3390/ani15243521