外に出られるかどうかで、部屋の中の探索が変わる
屋外に出られる猫と室内だけで暮らす猫で、部屋の中の探索がどう違ったかを見る第4回。室内の猫に探索の場をどう用意するかを考えます。

導入会話
マロン学長「うちの中だけで暮らしてる猫って、退屈しちゃわないのかな。」
いち教授「気になるところだね。今回の研究では、外に出られるかどうかを分けて調べ直しているよ。」
マロン学長「それで、どうだったの?」
いち教授「部屋の中を見て回る時間が、はっきり違っていたんだ。」
この回でわかること
- 屋外に出られない猫は、部屋の中の探索が長かった
- 探索の場が家の中に限られるという読み方
- この結果をそのまま良し悪しにしない理由
室内だけの猫は、部屋の中をよく調べていた
研究者は、探索・遊び・体の接触の3つについて、屋外に出られるかどうかを加えて分析し直しました。もともと、シェルターで行った予備調査に参加した猫が全員、外に出られない猫だったことがきっかけです。
その結果、屋外に出られない猫は、出られる猫より、部屋の中での探索が平均で約37秒長くなりました。3分間の場面での差です。
研究者の説明はこうです。外に出る猫は、見て回る、においを確かめる、追いかけるといった行動の多くを屋外で行います。家の中は、休む場所であり、人と関わる場所になりやすい。一方、室内だけで暮らす猫にとって、調べられる場所は家の中しかありません。
マロン学長「探検する場所が、家の中に集まるってことか。」
いち教授「そう読める結果だね。同じ『よく動く』でも、背景が違うんだ。」
「室内はかわいそう」という話ではない
この結果は、室内飼育がよくない、という意味ではありません。反対に、外に出せば猫が満たされる、という意味でもありません。
屋外に出せるかどうかは、地域の交通事情、感染症や寄生虫、近隣への配慮、野生の生きものへの影響など、行動以外の要素とあわせて決まります。この研究が示したのは、探索という行動がどこで行われているかの違いであって、どちらの暮らし方がよいかではありません。
なお、今回のシェルターの猫は、25平方メートルの屋外運動場を使える施設で暮らしていました。この点でも、一般的なシェルターの状況をそのまま代表するものではありません。
室内の猫に、調べる余地を残す
研究者は、室内で暮らす猫には探索の機会を、外に出る猫には落ち着いた接触の時間を、それぞれの必要に応じて用意するとよいのではないかと述べています。
家庭でできることは、大がかりでなくて構いません。
- 段ボールや紙袋を、たまに置き場所を変えて出す
- 洗濯物や買い物袋など、外のにおいがついた物を安全な範囲で確かめさせる
- 高い場所への行き来を、家具の配置で作る
- おもちゃを全部出しっぱなしにせず、入れ替える
ただし、探索が増えれば福祉が上がると証明されたわけではありません。猫が実際に使うかどうかを見て、使わないものは片づける方が現実的です。
今日からできること
- 部屋の中に、猫が新しく調べられるものを一つだけ用意する
- 増やしたあと、猫が使っているかを1週間ほど見て判断する
- 外に出る猫には、帰宅後に落ち着いて過ごせる場所を確保する
まとめ会話
マロン学長「探検する場所がないなら、こっちで少しだけ作ればいいんだね。」
いち教授「そういうことだね。全部を変えなくていい。猫が選べる余地を少し残すだけでいいんだ。」
マロン学長「ここまで環境の話が続いたけど、猫それぞれの違いはどうなんだろう。」
いち教授「最終回は、そこを見よう。実は環境より大きかった部分があるんだ。」
参考文献
- Kappel I, Materne B, Gansloßer U. Impact of Living Environment on Attachment Behaviour in Domestic Cats from Private Homes and Shelters. Animals. 2025;15(24):3521. https://doi.org/10.3390/ani15243521