環境の差より大きかった「その猫らしさ」
鳴き方や人への近づき方に見られた個体差の大きさを扱う最終回。一度の観察で猫を決めつけない見方と、この研究の限界を整理します。

導入会話
マロン学長「うちの猫、あんまり鳴かないんだ。ぼくのこと、どう思ってるのかな。」
いち教授「今回の研究、その心配にちょうど答えてくれる結果があるよ。」
マロン学長「ほんと?」
いち教授「鳴く回数の違いは、環境よりも、猫それぞれの違いでほとんど説明できたんだ。」
この回でわかること
- 鳴く回数のばらつきは、大部分が猫ごとの違いだった
- 近づき方や避け方にも、大きな個体差があった
- この研究の限界と、日常への持ち帰り方
鳴き方の違いは、その猫のものだった
今回の分析では、鳴く回数のばらつきのうち約93%が、猫ごとの個体差で説明されました。どの場面か、家庭かシェルターかといった条件で説明できたのは、残りのごくわずかです。
つまり、よく鳴いて人を呼ぶ猫は、どの場面でもよく鳴きます。もともと静かな猫は、どの場面でも静かなままです。人に近づく・避けるという行動や、ゴロゴロについても、半分以上が猫ごとの違いで説明されました。
マロン学長「じゃあ、鳴かないのは、ぼくのせいじゃないんだね。」
いち教授「そう考えていいよ。鳴かないことを、関係が薄い証拠として読む必要はないんだ。」
過去の研究でも、猫の性格はいくつかの側面に分けて捉えられており、その中に「静かさ」に当たる側面が挙げられています。声を使って人を呼ぶかどうかは、その猫の持ち味に近いものだと考えられます。
数字を大きく受け取りすぎないために
この研究には、はっきりした限界があります。読み方を決める前に、あわせて確認しておきたい点です。
- シェルターの猫は15匹で、家庭の67匹に比べてかなり少なく、年齢も若めでした。
- 年齢、性別、避妊去勢の状況、品種、世話をする人の性別は、統計モデルに入れられていません。
- 部屋の広さや配置は家ごとに違い、そろえていません。猫のストレスを減らすことを優先した設計上の限界です。
- 場面が進むほど反応が小さくなっており、慣れや疲れの影響が残っています。
- 探索的な研究のため、数値は目安として扱うべきだと著者自身が述べています。
また、猫の行動には、世話をする人の側の要素も関わってくると指摘されています。人の接し方や気持ちの状態が、猫の反応に影響する可能性です。猫だけを見て説明が完結する話ではありません。
今日からできること
- 鳴かない・寄ってこないことを、関係の薄さの証拠として読まない
- 猫の性格を、一度の場面や一日の様子だけで決めない
- 変わったのが「その猫らしさ」ではなく「最近の変化」なら、体調も疑って獣医師へ相談する
まとめ会話
マロン学長「暮らす場所でも変わるし、その猫らしさでも変わる。ややこしいけど、決めつけなくていいってことだね。」
いち教授「うん。研究は答えを一つに絞る道具じゃなくて、見方を増やす道具だよ。」
マロン学長「うちの猫は、うちの猫のままでいいんだね。」
いち教授「そうだよ。その子がどこで、どんなふうに過ごしているかを、これからも見ていこう。」
参考文献
- Kappel I, Materne B, Gansloßer U. Impact of Living Environment on Attachment Behaviour in Domestic Cats from Private Homes and Shelters. Animals. 2025;15(24):3521. https://doi.org/10.3390/ani15243521