92匹をどう分けた?——二群RCTを読む
デンマークの家庭猫102匹を二つの給餌時エンリッチメントへ無作為に分け、92匹を分析した研究設計と対象範囲を学びます。

導入会話
マロン学長「RCTなら、フードパズルの効果がはっきり分かる研究なんだよね?」
いち教授「無作為化は大切だけれど、何と何を比べたかで答えは変わるよ。研究の設計図を見よう。」
この回でわかること
- 対象になった猫の条件
- 二つの介入と無作為化の意味
- 無介入群がなかったこと
352件から102匹を選んだ
研究はデンマークでSNSと大学周辺のポスターを使い、2024年夏の3週間で352件の回答を集めました。その中から、一世帯一匹、1歳超、不妊化済み、屋外アクセスがないか制限され、ドライフードを食べる102匹を選びました。
対象行動を少なくとも一つ、毎日またはほぼ毎日示すことも条件です。研究前からフードパズルを毎日使っていた猫は除きましたが、毎日未満なら含めています。子猫、多頭世帯、自由に外出する猫、ウェットフードだけの猫は含まれません。参加者は自分から応募した飼い主で、デンマークの家庭猫全体から無作為に選んだ標本ではありません。
二つの群はどちらも工夫を受けた
102匹はオンラインの乱数生成で51匹ずつに分けられました。一方は食事時に食べ物を使わないパズル状のおもちゃ二つを出し、1時間後に片づけました。もう一方は据え置き型と可動型のフードパズルを使い、ドライフードを段階的にパズルへ移しました。
道具の選び方にも工夫があります。フードパズルは、前足や口で食べ物を取り出す据え置き型と、転がすと食べ物が出る可動型の二種類。おもちゃの方は、これになるべく似せて選ばれました。据え置き型のおもちゃは中のネズミを前足で捕まえる仕組みで、パズルから食べ物をかき出す動きに対応します。可動型のおもちゃは転がると鈴が鳴り、フードがからからと音を立てる様子に見立てています。食べ物が入っているかどうかだけを違いにするための設計です。
飼い主には道具とともに手順書が送られ、フードパズル群には難易度の調整を示す動画も渡されました。質問があればメールで研究者に連絡でき、24時間以内の返答をめざしたと書かれています。
4週間を終えたのは非食品おもちゃ群48匹、フードパズル群44匹の計92匹です。
このRCTが直接比べたのは、非食品おもちゃとフードパズルです。「何もしない群」はありません。
マロン学長「RCTでも、比べる相手がいない答えまでは分からないんだね。」
いち教授「そう。無作為化という看板だけでなく、対照群の中身を見ることが大切だよ。」
無作為化が助けること
無作為化は、介入前の違いが一方へ偏りすぎるのを減らします。そのため、二群の変化量を比べる土台になります。ただし今回、平均年齢は非食品おもちゃ群3.6歳、フードパズル群4.8歳で差が残りました。
著者らは、家庭で飼われている猫を「何もしない群」へ無作為に割り付けるのは現実的でないため、二つの能動的な工夫を比べる設計にしたと説明しています。その結果、この研究で最も確かに言えるのは二群の間の比較で、全体としての減少は慎重に読む必要がある、と著者ら自身が述べています。
飼い主には別の群があることを知らせませんでしたが、自分が使う道具は見えます。行動は飼い主自身が週ごとに回答したため、期待や注目の変化を完全には除けません。
今日からできること
- 研究を読む時は「RCT」の次に、比較した群の内容を確認する
- 対象の飼育条件が自宅の猫と同じか見比べる
まとめ会話
マロン学長「二群とも新しい道具を使ったから、無介入との効果は直接分からないんだね。」
いち教授「その理解が土台だよ。次は両群で何が変わり、群同士では何が違わなかったか数字を見よう。」
次回予告
両群の低下と、二群間の差なしを分けて読みます。