おもちゃとフードパズルで何が変わった?
両群の平均スコア、個別行動の多重比較補正、二群間の変化量を分け、数字が示す範囲を読みます。

導入会話
マロン学長「二つの群で、要求行動は本当に減ったの?」
いち教授「平均では両群とも下がったよ。でも個別の行動と群同士の差は、分けて読む必要があるんだ。」
この回でわかること
- 両群の平均スコアの変化
- 多重比較補正後に残った個別結果
- 二群間の差が検出されなかったこと
六行動の平均は両群で下がった
飼い主は毎週、六つの行動頻度を「一日に何度も」「一日に一回くらい」「数回」「一回」「全くない」の五段階で回答しました。六項目をまとめた平均スコアは、0週から4週まで非食品おもちゃ群、フードパズル群の両方で低下しました。群内のp値はいずれも0.0001未満でした。
p値は、観察された差が偶然だけで説明できるかを考える統計指標です。小さいことは「効果が大きい」「原因が証明された」と同じではありません。
個別行動は補正後の基準で見る
研究は個別行動を何度も比べています。比較を増やすと偶然の当たりも増えるため、21比較を考慮した基準p=0.0024を使いました。
0週と4週の比較でこの基準を満たした個別結果は、フードパズル群の「注意を求めて鳴く」と「注意を求めて押す」で、どちらもp=0.0009でした。夜間に起こす、食べ物をねだる、禁止行動などは、補正前の0.05より小さくても補正後の基準を満たしませんでした。
「全くない」と答えた飼い主の割合で見ると、たとえば夜間に起こす行動は、非食品おもちゃ群で19%から35%へ、フードパズル群で7%から34%へ増えました。注意を求めて押す行動は25%から50%、14%から48%です。数字としては大きく動いていますが、次回に見るように、この変化を介入の効果とそのまま読むことはできません。
「多くの行動が下がって見えた」と「すべての行動で明確な差が確認された」は同じではありません。
攻撃行動は結論が出なかった
遊びや注意を求めて人を攻撃する行動は、非食品おもちゃ群でp=0.23、フードパズル群でp=0.05と、はっきりした変化が見えませんでした。著者らは、この行動は最初から少なく、0週の時点で6割強の猫が「全くない」だったため、変化を見つけにくかったと説明しています。減らなかったのではなく、減ったかどうか判断できる材料が足りなかった、という読み方です。
群同士の変化量には差がなかった
六つの個別行動のどれでも、4週間の変化量に非食品おもちゃ群とフードパズル群の有意差は検出されませんでした。平均スコアの群間p値は0.57でした。
著者らはもともと、フードパズルの方が狩りの欲求の出口になり、おもちゃより減り方が大きいと予測していました。図の上では多くの行動でフードパズル群の減り幅が大きく見えましたが、統計的には差と言えませんでした。
マロン学長「フードパズルが普通のおもちゃより上、とは言えなかったんだね。」
いち教授「そうだね。ただし『二つは同じ効果』を証明したわけでもないよ。」
関心を示さない猫もいた
二つの道具のどちらにも関心を示さなかった猫は、非食品おもちゃ群17/48匹、フードパズル群5/44匹でした。据え置き型を好んだ猫は両群とも半数ほどで、可動型を好んだ猫はフードパズル群の方が多めでした。
集団の平均が動いても、一頭ごとの受け入れ方は同じではありません。使わない猫へ難易度や量を押しつける根拠にはなりません。
今日からできること
- 「平均で減った」「個別で差があった」「群間差があった」を分けて読む
- 猫が道具へ近づかないことも結果として記録する
まとめ会話
マロン学長「両群の平均は下がったけれど、群同士の差や個別結果は慎重に見るんだね。」
いち教授「その通り。次は、無介入群がない時に残る別の説明を整理しよう。」
次回予告
平均への回帰や目新しさは、結果へどう関わるのでしょう。