その手、いったん待って。猫に選んでもらう撫で方
猫が近くに来たらすぐ撫でるのではなく、参加するかを猫に選んでもらうCAT指針を紹介します。英国の譲渡待ち猫100匹で、短い訓練後に親和行動が増え、対立・葛藤関連行動が減った研究を読みます。

導入会話
マロン学長「猫が近くへ来たら、撫でてほしいってことだよね?」
いち教授「近くにいることと、触られたいことは同じとは限らないよ。」
マロン学長「じゃあ、どうやって聞けばいいの?」
いち教授「手を出し続けず、猫が近づくか、離れるか、続きを求めるかを選べるようにするんだ。」
この回でわかること
- CATは猫へ選択を返すふれあいの指針
- 100匹・120人の実験で訓練前後を比べた
- 攻撃しないことを、楽しんでいる証拠にしない
CATは三つの頭文字
Haywoodらが作ったCAT指針は、英語の三つの頭文字からできています。
- C:Choice and Control——猫へ選択とコントロールを与える
- A:Attention——猫の行動と体に注意する
- T:Touch——触る場所を考える
猫を抱き上げたり押さえたりする方法ではありません。人が座った位置から、猫がふれあいへ参加するか、途中でやめるかを選べる形を作ります。
100匹の行動はどう変わった?
英国の譲渡施設で、一般参加者120人が訓練前に3匹、5分のCAT訓練後に別の3匹と接しました。解析対象は人へ社会化された猫100匹、最終データは535観察です。
訓練後、人の接し方はCAT指針へ近づきました。猫はすり寄り、前足でこねる、耳を前・中立に保つなどの親和的・肯定的関連行動をより多く示しました。
威嚇、唸り、叩く、噛むをまとめた対立行動や、回避、固まる、急な毛づくろいなどの葛藤関連行動は訓練前で多く見られました。
マロン学長「触り方を少し変えるだけで、猫の反応にも違いが出たんだね。」
いち教授「有望な結果だね。ただし、家庭の全猫へそのまま使える法則ではないよ。」
「嫌なら噛む」は待ちすぎ
猫が噛む、叩く、威嚇する前にも、顔を背ける、耳を回す、体を固くする、尾を強く動かすといった変化が出ることがあります。
攻撃しなかったから楽しんでいた、と決めることはできません。研究でも、対立行動だけでなく、より小さな葛藤関連行動を記録しました。
最初の目標は、正確に気持ちを当てることではありません。猫が「参加しない」「途中でやめる」を選べる状態にすることです。
今日からできること
- 猫が近くに来ても、すぐに撫でず、猫から接触するかを待つ
- 離れた猫を追わず、ふれあいを終える選択を守る
まとめ会話
マロン学長「CATは、猫を上手に触る技より、猫に選んでもらう考え方なんだね。」
いち教授「そう。触る前、触っている途中、離れた後の選択を守るんだ。」
マロン学長「100匹の結果は、どんな実験で集めたの?」
いち教授「次回は535場面の作り方と、前後比較の限界まで確認しよう。」
次回予告
100匹・120人・535観察という数字を、対象、順序、動画評価、統計解析から読みます。