5分の訓練で何が変わった?実験の内側を読む
譲渡待ち猫100匹と一般参加者120人を対象にしたCAT指針研究を、訓練前後の順序、535観察、行動符号化、31指標の統計から読みます。非盲検と多重比較補正なしという限界も整理します。

導入会話
マロン学長「100匹も調べたなら、CATの効果はかなり確実なのかな?」
いち教授「匹数だけでなく、誰がどの順番で何をしたかを見る必要があるよ。」
マロン学長「訓練あり・なしの二つのグループに分けたの?」
いち教授「そこが大事。全員が訓練前、訓練後の同じ順番だったんだ。」
この回でわかること
- 人120人が訓練前3匹、訓練後3匹と接した
- 猫100匹・最終535観察を猫ごとに比較した
- 順序固定、非盲検、多重比較補正なしの限界がある
114匹から100匹を解析
研究場所は英国の譲渡施設1か所です。当初114匹を組み入れ、両条件で十分に姿が見えない6匹、健康・福祉上の早期中止4匹、譲渡2匹、安全上の懸念2匹を除き、100匹を解析しました。
対象は6か月超で、人へ社会化され、家庭へ譲渡可能と判断された猫です。著しいストレスや安全上の懸念がある猫は最初から対象にしていません。
参加者120人の90%は女性で、57%が猫と暮らしていました。SNSと施設のLinkedIn関係者を通じた募集で、一般人口からの無作為抽出ではありません。
前3匹、訓練、後3匹
参加者は訓練前に3匹と各5分接し、その後に5分のCAT動画と説明シートを見ました。訓練後は別の3匹と各5分接しました。
猫側では、訓練前・後の条件、時刻、人がそれまでに会った猫の数が偏らないようにしました。しかし人側は全員が訓練前→訓練後の順です。
マロン学長「後半はCATを学んだだけでなく、すでに3匹と会った後でもあるんだね。」
いち教授「そう。訓練、経験、時間経過、疲れを完全には分けられない設計だよ。」
論文を深く読む
100匹について586動画を符号化し、最終的に535観察を使いました。30匹は予定した6観察がそろわず、2〜3観察の平均や単独値が使われています。
47行動を記録し、信頼性を満たした31指標を猫ごとの訓練前・後の平均にして比較しました。探索的研究として多重比較補正を行っていないため、個々のp値には偶然の有意差が含まれる可能性があります。
20動画は第二評価者が条件を知らずに確認しましたが、主要評価者はデータ収集にも関わり、訓練後の壁にはCATポスターがありました。多くの動画は条件を伏せて評価できず、評価者バイアスを除けません。
表2の人を嗅ぐ時間では、訓練後SD=0.6072が平均0.0467、中央値0.0231、SE0.0067と整合しにくい値です。この講座ではそのSDを使いません。
今日からできること
- 前後比較では、全員の順序が同じかを確認する
- 多数の指標を比べた時は、多重比較と盲検の有無を見る
まとめ会話
マロン学長「100匹でも、順序や評価方法によって読める範囲が変わるんだね。」
いち教授「うん。結果は有望だけど、家庭の全猫に確定した法則とは言えないよ。」
マロン学長「それでも、Cの『選択』はどう実践すればいい?」
いち教授「次は、近づく・離れる・続きを求める選択を具体的に見よう。」
次回予告
CATのC、Choice and Controlを、触る前・途中・終わりの三つに分けます。