持ってくる猫も、持ってこない猫もいる
猫が物を持ってくる行動を、犬のまねや賢さ比べにしないための第1回。取ってくる・来ないのどちらも自然な個性として見ます。

導入会話
マロン学長「いち教授、ぼくの友だちの猫は、おもちゃを何度も持ってくるんだって。犬みたいでびっくりした!」
いち教授「猫にも、物を追ってくわえ、近くへ運ぶ子がいるんだよ。でも、しない子が遊び下手ということではないんだ。」
この回でわかること
- 取ってくる行動は、猫によって見られる遊び方の一つ
- 取ってくる・来ないだけで、賢さや遊び好きは決められない
- 猫の好みに合う遊びを見つけることが大切
「持ってくる」は、いろいろな遊びの中の一つ
猫の遊びには、動く物を追う、隠れて待つ、前足で転がす、高い所から見張るなど、いろいろな形があります。物をくわえて人の近くへ来る行動も、その中の一つです。
猫の遊びは、これまで子猫を中心に研究されてきました。追う、飛びかかる、かむといった動きは、狩りの流れとよく似ています。成猫がどう遊ぶか、とくに人と一緒にする遊びをどう組み立てるかについては、研究がまだ少ないと論文は述べています。
今回紹介する研究は、取ってくる猫を報告した飼い主の回答を集めたものです。取ってこない猫を含む比較ではないため、「猫は本当は取ってくるもの」とは言えません。猫全体の中で取ってくる猫がどれくらいいるかも、この研究からは分かりません。
マロン学長「じゃあ、ぼくが持っていかなくても平気なんだね!」
いち教授「もちろん。猫が何に反応するか、どこまで遊びたいかには個性があるんだ。」
「犬の遊び」という思い込みを外す
物を取ってくる遊びは、犬の行動として知られています。レトリーバーのように、その動きを名前に持つ犬種もあります。そのため、猫が同じことをすると「犬みたい」「特別に賢い」と受け取られがちです。
けれど論文は、猫の取ってくる行動が昔から飼い主の間で語られ、品種の説明にも書かれてきたことを紹介しています。シャムやその交配種で多く報告されてきましたが、今回の回答でも1,154匹のうち994匹は雑種でした。特定の品種だけの行動ではありません。
犬と比べるより、猫が自分の暮らしの中でどんな遊びを選んでいるか、という見方のほうが、目の前の猫を理解する助けになります。
論文が着目したのは、この遊びが人との共同作業になっている点です。猫が物を運び、人が投げ、猫がまた運ぶ。どちらか一方だけでは成り立たない遊びで、猫が人を遊びの相手として選んでいることになります。犬に似ているかどうかより、猫がどんな時に人を誘い、どんな時にやめるのかを見るほうが、猫と人の関わりを知る手がかりになります。
比べるより、反応を見る
同じおもちゃでも、すぐ追う猫もいれば、少し眺めてから動く猫もいます。持ってきたら何度も投げ返すことが好きな猫も、数回で満足する猫もいます。
「犬のようにできるか」ではなく、目が生き生きしているか、近づいてくるか、途中で離れたかを見た方が、猫との遊びには役立ちます。取ってこない猫も、追う、待ち伏せる、転がすといった遊びの中に、その猫らしい選び方を持っています。研究が示したのは、取ってくる猫の中でも好きな物、始め方、終え方が一匹ずつ違うということでした。
今日からできること
- 猫が好きな遊び方を、追う・待つ・転がす・持ってくるなどで一度メモする
- 持ってこないことを、遊び嫌い・しつけ不足と決めつけない
- 犬と比べず、その猫が選ぶ遊びを基準にする
まとめ会話
マロン学長「得意な遊びは、猫ごとに違っていいんだね。」
いち教授「そうだよ。次回は、取ってくる猫について集めた調査を、数字の読み方から見ていこう。」
次回予告
第2回は、飼い主924人・猫1,154匹の質問票調査で、何が分かり、何が分からないかを整理します。