広さが違うと、猫はどれだけ動くのか
室内と屋外運動場で暮らす猫の移動距離を比べた第1回。約1.8倍の差と、その差を広さだけで説明できない理由を整理します。

導入会話
マロン学長「うちの中だけで暮らしてる猫って、どれくらい動いてるんだろう。」
はち助教授「いい着眼点ね。今回は、その『どれくらい』を装置で測った研究を見ていきましょう。」
マロン学長「測れるんだ!」
はち助教授「ええ。ただし、家庭の猫を測った研究ではないの。そこを先に押さえておきましょうね。」
この回でわかること
- 広い場所で暮らす猫は、1日に約1.8倍の距離を動いていた
- この研究が比べたのは、家庭の室内飼いと外飼いではない
- 差の原因を、広さだけに求められない理由
21日間、10分ごとに記録した
Parkerら(2022)は、対照的な2つの環境で暮らす猫を、同じ時期に同じ方法で記録しました。
一方は南フランスの猫舎の室内で、1部屋が約29平方メートル。1匹あたりにすると約3.6平方メートルです。もう一方は北フランスのシェルターの屋外運動場で、草や木のある約1145平方メートル。1匹あたり約42.4平方メートルになります。
どちらの猫も首輪に2つの装置をつけました。ひとつは電波で位置を測って移動距離を出すもの、もうひとつは個体を見分けて食べた量を量るものです。10分ごとの記録が、2016年7月の21日間、自動でたまっていきました。
マロン学長「首輪だけで、そんなに分かるんだ。」
はち助教授「歩いた距離も、いつ何グラム食べたかも残るのよ。人が見張っていなくていいから、猫の様子が変わりにくいという利点もあるわ。」
1日に約4.3kmと、約2.3km
結果はこうです。1日の移動距離は、屋外グループが平均約4.3km、室内グループが約2.3kmでした。偶然だけでは説明しにくい差です。
運動場は室内の約39倍の広さで、草も虫もいます。走れる距離があり、確かめたいものが多い場所では動く量が増える。ここは順当な結果といえます。
この数字を、家の猫に当てはめない
ただし、注意したいことがあります。
この研究が比べたのは、家庭の室内飼いと外飼いではありません。どちらも囲いの中の暮らしです。そのうえ2つのグループは、広さ以外もまるごと違います。
- 年齢が1〜2歳と、1〜12歳
- 品種が6つの純血種と、ヨーロピアン種
- 由来が最初からペットの猫と、多くが元野良猫
- 一緒に暮らす頭数も、場所も、天候にふれるかどうかも違う
この結果だけから「広さが違うから動く量が違った」とは言い切れません。年齢の差だけでも、動く量は変わります。
マロン学長「じゃあ、うちの猫が2kmくらいなら普通、とかも言えないんだね。」
はち助教授「言えないわ。この数字は、この施設のこの季節のもの。目標値として使うものではないのよ。」
今日からできること
- 研究の数字を、うちの猫の運動量の合格ラインにしない
- 動く量が気になるときは、他の猫とではなく、その猫の普段と比べる
- 広さを変えられなくても、動ける場所と確かめられるものが家にあるかを見る
まとめ会話
マロン学長「差はあったけど、理由は広さだけじゃないんだね。」
はち助教授「そう。違いがいくつも重なっているの。数字を見たら、まず何と何を比べた数字なのかを確かめる癖をつけましょう。」
マロン学長「次は何を見るの?」
はち助教授「次回は、環境が違っても変わらなかったところを見ていくわ。そちらの方が面白いかもしれないわね。」
参考文献
- Parker M, Serra J, Deputte BL, Ract-Madoux B, Faustin M, Challet E. Comparison of Locomotor and Feeding Rhythms between Indoor and Outdoor Cats Living in Captivity. Animals. 2022;12(18):2440. https://doi.org/10.3390/ani12182440