猫と暮らしていれば、ニャーを当てられる?
現在の猫飼育経験と正答率の関連を、場面ごとに見ます。

導入会話
マロン学長「猫と暮らしているなら、鳴き声も得意になりそうだよね。」
いち教授「この研究では、一部の場面で飼育者の正答が多かったよ。でも『飼うと上達する』とまでは言えないんだ。」
この回でわかること
- 現在の猫飼育者と非飼育者で差が出たのは2場面
- 女性と男性の差も2場面に限られた
- 群の比較から能力の原因は決められない
飼育者で差が出たのは隔離とブラッシング
Prato-Prevideら(2020)は、代表的な声を正しく選んだ割合を、現在猫を飼う人と飼わない人で比べました。隔離は35.2%対18.8%、ブラッシングは44.4%対22.2%。どちらも統計的な差が報告されました。一方、ごはん待ちは44.4%対36.8%で、差は統計的には確認されませんでした。
「飼い主ならどんなニャーも分かる」ではなく、差が見えたのはこの研究の2場面です。しかも参加者自身の猫の声を聞いたわけではありません。
マロン学長「知っているうちの子を当てた数字じゃないんだね。」
性別の差も場面ごと
女性は男性より隔離(31.5%対17.7%)とブラッシング(37.7%対24.1%)で正答率が高い結果でした。ごはん待ちは有意差がありません。また、子育て経験の有無、子どもの頃に猫と暮らしていたかによる有意な正答率差は確認されませんでした。
人数は女性146人、男性79人で均等ではありません。参加した人は研究者のつながりやFacebookなどで集まったボランティアです。この標本の差を、すべての女性・男性や飼い主に広げるのは慎重であるべきです。
なお、猫を飼っている人や子どもの頃に猫と暮らしていた人は、正答率だけでなく「猫への共感」の得点そのものも高い傾向がありました。共感得点と正答の関係は次回扱います。
「関連」と「原因」は別
この研究は人を無作為に「猫を飼う群」「飼わない群」へ分けて訓練した実験ではありません。飼育経験と正答が一緒に見られても、年齢、関心、音声への慣れなど別の事情を切り離せません。したがって「猫を飼えば聞き分け能力が上がる」とは証明していません。
家庭では、見知らぬ猫の単発音声の3択より、毎日の食事、動き、居場所を一緒に見られます。この研究の正答率を、そのまま飼い主の理解力の点数にしないでください。
「昔飼っていた」と「今暮らしている」も同じではない
現在の猫飼育では隔離・ブラッシングに差が見られましたが、子どもの頃に猫と暮らしたかでは有意差がありませんでした。著者らは、現在の日常的な接触の方が音声への慣れに関係する可能性を考察しています。しかし、接触頻度を実測したわけではなく、どの経験が役立ったかまでは分かりません。
また、女性と男性の比較も、参加者数が146人対79人と異なります。研究は性別や飼育経験から個人の能力を予測するためのテストではありません。群平均の関連を、目の前の人へ「得意・不得意」のラベルとして貼らないことが大切です。
📄 論文を深く読む
この回の群別割合と有意差は原著Table 2にあります。分母と場面を確かめたい方は論文要約をご覧ください。
今日からできること
- 自分の予想が外れても「飼い主失格」と考えず、ほかの手がかりを増やす。
- 家族間で鳴き声の解釈が違う時、場面の前後も一緒に確認する。
まとめ会話
マロン学長「差はあったけど、飼ったから上手になったと決める研究じゃないんだね。」
いち教授「そう。次は『猫への共感が高い人ほど当てる?』という別の関連を見てみよう。」
次回予告
動物一般への共感と、猫への共感は同じ結果だったのでしょうか。
参考文献
Prato-Previde E, et al. (2020). Animals 10(12):2390. https://doi.org/10.3390/ani10122390(CC BY 4.0の原著を日本語で解説)