同居猫の名前を聞くと、顔を思い浮かべる?
猫は自分以外の猫の名前も覚えるのでしょうか。名前を聞いた後に一致・不一致の顔写真を見せた研究から、家庭猫の結果と「分かる」と言える範囲を解説します。

導入会話
マロン学長「ぼくの名前を呼ばれた時、近くの猫がこっちを見ることがあるよ。ぼくの名前も知っているのかな?」 いち教授「日常の印象だけでは決められませんが、名前と顔の組み合わせを使って調べた研究があります。」 マロン学長「自分の名前に返事をする実験?」 いち教授「今回は自分ではなく、同居する別の猫の名前と顔を結びつけるかを見たのです。」
この回でわかること
- 自分の名前研究との違い
- 名前と顔の不一致を使う考え方
- 家庭猫の結果から言える範囲
調べたのは「他者の名前」
2022年の研究は、猫が自分の名前に反応するかではなく、別の同居猫の名前を聞いた時に、その猫の顔を予測するかを調べました。
対象猫以外から2匹の同居猫を選び、飼い主が普段通り呼んだ名前と、それぞれの正面顔写真を用意しました。
聞いた名前が自分を指すかではなく、誰を指すかを調べた研究です。
名前と顔をわざと食い違わせる
猫は同居猫の名前を4回聞いた後、ノートパソコンに表示された顔を7秒間見ました。
- 一致条件:名前と顔が同じ猫
- 不一致条件:名前と顔が別の猫
聞いた名前から特定の顔を予測していれば、別の顔が出た時に長く見ると考えます。この方法は期待違反課題と呼ばれます。
長く見ることは、組み合わせの食い違いに注意を向けた可能性を示します。驚き、困惑、好意など、感情の種類は直接分かりません。
家庭猫では不一致を長く見た
実験1では家庭猫19匹と猫カフェ猫29匹をテストしました。家庭猫は同居猫の名前と顔が不一致の時、一致時より画面を長く見ました。
著者らは、家庭猫が名前を聞いた時に対応する同居猫の顔を予測した可能性があると解釈しました。名前と顔を教える特別な訓練はしていません。
日常生活の中で、名前の音と同居猫の顔の対応を学んだ可能性が、この研究の中心です。
「名前を理解する」の範囲
この結果は、猫が名前の意味を人間の言葉と同じ仕組みで理解する、すべての同居猫の名前を覚える、呼ばれたら来ることを示しません。
研究で測ったのは、短い画面課題での注視時間です。「知っている」という日常語を使う時も、何を測ったかを添える必要があります。
今日からできること
- 自分の名前への反応と、他者の名前への反応を分けて考える
- 「分かる」と言う時は、顔の食い違いを長く見た研究だと添える
まとめ会話
マロン学長「同居猫の名前を聞いて、別の顔が出ると長く見たんだね。」 いち教授「家庭猫ではそうでした。名前から顔を予測した可能性があります。」 マロン学長「人間みたいに名前の意味が分かる、とまでは言わない。」 いち教授「その通りです。次は、実験手順とデータを詳しく確かめましょう。」
次回予告
第2回は、名前4回、顔7秒、4試行という期待違反課題を深く読みます。
参考文献
Takagi S, et al. Cats learn the names of their friend cats in their daily lives. Scientific Reports. 2022;12:6155. https://doi.org/10.1038/s41598-022-10261-5