在宅が増えた時、猫との毎日はどう変わった?
日本の最初の緊急事態宣言後に集めた猫飼い主612人の標本と、勤務・接触・行動を分けて読む方法を確認します。

導入会話
マロン学長「家にいる時間が増えたら、猫はうれしいのかな。それとも落ち着かなくなるのかな?」
いち教授「どちらか一つと決める前に、研究が何を聞いたのかを整理しよう。答えは一方向ではなかったんだ。」
この回でわかること
- 研究の背景と、日本の制限が穏やかだったこと
- 回答した612人の特徴
- 質問票が別々に尋ねた三つのこと
外出制限とペットに関する先行研究
Takagiら(2023)の論文は、COVID-19の外出制限が人の不安、抑うつ、身体活動に影響したという報告から始まります。ペットは心理的な支えになり得る一方、費用や世話を負担と感じる人もいて、影響は一方向ではないとされています。
ペット側についても、犬では散歩や他の犬との接触が減り、要求や分離に関わる行動、鳴き声、注意を求める行動の増加が報告されていました。猫では、注意を求める行動や社会性の増加、リラックスした様子と、飼い主の存在を邪魔に感じているような様子の両方が報告され、良い・悪いの結論はそろっていませんでした。
日本の制限は他国より穏やかだった
日本の最初の緊急事態宣言は2020年4月7日から5月25日まででした。原著は日本の措置を、罰則を伴わない他国より緩やかな制限だったと説明しています。海外の厳しいロックダウン下の研究と、そのまま比べられるわけではありません。この研究は、その時期の生活の変化、飼い主と猫の関わり、猫の行動の関係を探索したものです。
回答した612人
Takagiら(2023)は、日本の最初の緊急事態宣言後に、猫と犬の飼い主へオンライン質問票を行いました。募集は2020年7月から、Twitter、Facebook、Instagram、口コミで行われ、20歳以上の日本の飼い主が対象です。多頭飼いの場合も、1人につき1匹について答えてもらいました。
猫飼い主は678件から重複66件を除き、有効612件でした。回答者の92.65%が女性、平均年齢45.35歳で、東京都居住者や高所得者が多い偏りもありました。単頭世帯279人、多頭世帯333人です。
この612人は、日本のすべての猫飼い主を無作為に選んだ標本ではありません。
マロン学長「SNSで集めた人たちだから、猫のことをよく気にしている人が多そうだね。」
いち教授「その可能性はある。著者らも、自己選択の標本であることを限界に挙げているよ。」
質問票が別々に尋ねた三つのこと
質問票は、飼い主の勤務・通学とWHO-5、猫へ近づく・触る・呼ぶ・食事やおやつを与える頻度、Fe-BARQによる猫の行動を別々に尋ねました。WHO-5は人のメンタルヘルスを5問で測る尺度、Fe-BARQは猫の行動を多くの項目で飼い主が評価する質問票です。
勤務条件は、在宅のまま131人、出勤のまま183人、出勤から在宅へ変わった142人、出勤の頻度が減った156人に分かれました。
接触変化得点が増加した人は345人、不変257人、減少10人でした。接触の五項目それぞれについて増えた・変わらない・減ったを+1、0、-1として足し、1以上を「増加群」、0以下を「不変・減少群」としています。研究では0以下を一群にしたため、減少した10人だけの特徴は読めません。
今日からできること
- 在宅時間と、実際に猫へ近づいた場面を別に記録する
- 猫が先に近づいた場面と、人が先に近づいた場面を分ける
まとめ会話
マロン学長「在宅が増えた、接触が増えた、猫の行動、の三つを別々に聞いた研究なんだね。」
いち教授「そう。次は、その『前後』の答えがいつ、どう集められたかを見よう。」
次回予告
制限前後の回答が、約6か月後からの回顧評価だった意味を読みます。