14匹・2日・3台のカメラ——家庭内実験の組み立て
同じ猫が30分と4時間の両条件を経験する反復測定を解説します。対象猫の条件、2日間の順番調整、撮影区間、視野外29.2%と非盲検の限界、小標本の読み方まで確認します。

導入会話
マロン学長「14匹を30分組と4時間組に分けたんですか?」
いち教授「そこが大事なところだよ。別々の組ではなく、同じ14匹が両方を経験したんだ。」
マロン学長「猫ごとの性格の違いを少し抑えられそうですね。」
いち教授「その通り。ただし、同じ猫を比べれば何でも解決するわけではない。順番や観察できない時間も見よう。」
この回でわかること
- 対象となった14匹の範囲
- 同じ猫を両条件で比べる反復測定
- カメラ観察で残る欠測と非盲検
どんな猫が参加したか
対象は雌9匹、雄5匹、年齢0.6〜15歳、平均6.2±1.1歳の家庭猫でした。健康で、既知の行動上の問題がなく、飼い主と6か月以上暮らしている単独飼育猫です。
この条件は研究を読みやすくする一方、結果を広げられる範囲も決めます。多頭飼育、病気のある猫、分離時に強い問題を示す猫が同じ反応をするとは限りません。
同じ猫の二つの日を比べる
観察は各家庭で連続する2日間、同じ時刻帯に行われました。一方の日は30分、もう一方の日は4時間です。どちらを先にするかは偏らないよう調整されました。
猫Aと猫Bを比べると、年齢、性格、生活環境など多くの違いが混ざります。同じ猫の別の日を比べれば、そのような個体差をある程度抑えられます。
一方、各条件は1回ずつです。その日の物音、直前の睡眠、外の気配など、日ごとの揺れは残ります。反復測定は強みですが、「2日でその猫のいつもが分かる」という意味ではありません。
3台のカメラと観察区間
飼い主は出発前に少なくとも30分在宅し、普段どおりに振る舞いました。出発前5分、留守中、帰宅後5分を3台のカメラで撮影しました。
それでも猫が視野外にいた時間は、解析対象17.5時間の29.2%でした。猫は高い所、家具の陰、別の部屋へ移動できます。映像に映らない時間は「何もしていなかった時間」ではなく、「行動を確認できない時間」です。
論文を深く読む
留守中は30分または4時間の全映像を、最初から最後まで同じ密度で集計したわけではありません。出発直後、終了前、途中の指定された5分区間を抽出して比較しました。
また、映像の長さや時点から条件を推測できるため、行動を記録する観察者は条件について盲検化されていません。先入観が必ず結果を変えたとは言えませんが、評価者の期待を完全には切り離せない設計です。
多くの行動項目を検討している点も覚えておきましょう。小さなp値が見つかった項目だけでなく、比較した項目全体と、再現性を考える必要があります。
家庭内研究の価値
実験室より統制しにくい代わりに、猫が普段暮らす環境で観察できたことは大きな長所です。不慣れな部屋への反応ではなく、日常に近い外出と帰宅を記録しています。
研究には、統制の強さと生活場面への近さの間で選択があります。この研究は家庭での自然さを選び、その代わりに視野外や日ごとの揺れを引き受けています。
今日からできること
- 研究の数字を見る前に、同じ個体の比較か、別の群の比較かを確認する
- 映像に映らない時間を「行動なし」と読み替えない
まとめ会話
マロン学長「同じ猫を比べるのは強いけれど、各条件1回で、見えない時間もあったんですね。」
いち教授「うん。設計の長所と限界は、どちらか一方を消すものではないよ。」
マロン学長「普段の家で観察した価値も残ります。」
次回予告
次回は、留守中の「休息割合0.58対0.27」を読みます。4時間条件の方が休んだという数字が、なぜ「長い留守番ほど落ち着く」にならないのかを考えましょう。