GPS17匹・動画13匹——分母が違う二つの観察
性格評価29匹から追跡23匹、GPS17匹・動画13匹へ至る流れを読みます。

導入会話
マロン学長「23匹を調べたのに、結果の表では17匹や13匹と書いてあるよ?」
いち教授「使えた記録によって、分析に入る猫が違うんだ。」
この回でわかること
- 29匹→23匹→17匹/13匹という分析対象の絞り込み
- GPSと動画で分母が違う理由
- 1039件が性格分析だけの別データセットであること
どんな地域、どんな猫か
調査地はパリ南部のシュヴルーズ渓谷下流にある郊外で、一戸建て、農地、小さな林が混ざる場所です。募集に応じた約100匹から、住まいが調査域の中にあること、1〜10歳であること、猫用の出入口から自由に外へ出られることを条件に36匹が選ばれました。幼い猫は性格がまだ固まっておらず装置も重いため、高齢の猫は活動性の面から除かれています。全頭が避妊去勢済みの雑種猫でした。
29匹から23匹へ
条件を満たした36匹から、飼い主の都合などで29匹が性格質問票に参加しました。まずダミー装置付きの首輪に慣れてもらい、行動が乱れた6匹を除いた23匹がGPS・カメラを装着しました。首輪を嫌がる猫をそのまま測ったわけではありません。
GPSは17匹、動画は13匹
GPSでは装置紛失・故障などで3匹の位置記録が得られず、さらに3匹は記録期間が短く行動圏モデルが収束せず、17匹を解析しました。動画では利用できる10日分を持たない4匹を除き、13匹です。各猫が15〜32日装着しても、解析可能な記録は同じとは限りません。
カメラは昼間の最大8時間、5分撮影・1分GPS記録を繰り返しました。記録された屋外時間は実際に外にいた時間の全体ではありません。夜間の狩りも含みません。
装置はGPSとカメラが一体になったもので、朝に起動して最大8時間後に回収し、充電します。衛星が5基に届かない測位点や不自然な位置は取り除かれ、GPSの記録が時間的に続いていることを補正した方法で、中心域(50%)と全行動圏(95%)の面積が推定されました。動画は10秒未満のものと建物の中のものを除き、探索・捕食・観察・不活発の四つに分けて記録しています。捕食のイベントには、成功した捕獲だけでなく、待ち伏せの後に失敗した追跡も含まれます。
マロン学長「首輪を嫌がった猫は最初から外したんだね。」
いち教授「そうだよ。装置で行動が変わってしまったら、普段の行動を測ったことにならないからね。」
「1039匹」は追跡数ではない
四つの性格特性を形容詞から抽出するため、今回の29匹に、別の未公表データ1010匹を合わせて1039件で因子分析を行いました。行動圏の推定が1039匹で確かめられたわけではありません。結果を読む時は、表ごとの分母へ戻ります。
昼間だけを追った理由
研究は昼間の記録に限られています。著者らが鳥や爬虫類・両生類への関心を持っていたこと、夜間は猫を室内へ入れる家庭があったことが理由です。この選択によって、夜に行われる狩りや夜の行動圏はこの研究の外に置かれています。装置の紛失や不具合もあり、GPS解析に至ったのは17匹、動画解析は13匹でした。標本の小ささは、著者ら自身が「追加のデータが結論を強めるだろう」と要旨で述べる理由でもあります。
今日からできること
- 論文の数字を読む時は、どの分析の対象数かを確認する
- 装着に慣れなかった猫を無理に測定対象へ含めない研究設計を評価材料にする
まとめ会話
マロン学長「大きな1039は性格の形容詞の分析、外の行動はもっと少ない猫なんだね。」
いち教授「そう。次は17匹のGPS結果を見よう。」
次回予告
「臆病な猫は近くにいる?」を、p値と行動圏の意味から読みます。
参考文献
Berrand B, et al. (2026). Ecology and Evolution, 16, e73520. https://doi.org/10.1002/ece3.73520