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ネコフリークス大学Neko Freaks University
講座067第1回 / 全5回

猫は本当に甘味を感じない?

猫が甘味を好まないことと、甘味を検出できないことは同じでしょうか。T1R2とT1R3からなる受容体を調べた研究をもとに、わかったことと言い切れないことを整理します。

いち教授
いち教授
講座067

導入会話

マロン学長「人はケーキを見ると甘そうって想像するけど、ぼくたちも同じ甘さを感じているのかな?」 いち教授「猫は甘味への反応が人と違うんだ。ただし、短い一言で片づける前に研究が何を測ったか見よう。」 マロン学長「感じ方そのものを聞くわけにはいかないよね。」 いち教授「そうなんだ。行動と体の仕組みを分けて考える必要があるよ。」

この回でわかること

  • 「好まない」と「検出できない」の違い
  • 甘味受容体を作る2つの部品
  • この研究が直接測っていないこと

甘いものを好まないという観察

2005年にPLoS Geneticsで発表されたLiらの論文は、家猫が糖や高甘味度甘味料へ強く引かれないという先行研究から始まります。味覚神経の記録でも、塩味、酸味、苦味、アミノ酸などには反応する一方、ショ糖を含む複数の糖への反応は見られなかったと整理されています。

ここで大切なのは、甘味以外の味覚までないわけではないことです。猫の味覚全体が弱いという話ではなく、甘味という一つの感覚に関わる仕組みが人と違うのではないかという問いです。

また、食べ物を「好まない」ことと、味を「検出できない」ことは同じではありません。好みには匂い、食感、温度、空腹、経験なども関わります。本研究は、このうち甘味を受け取る最初の仕組みに焦点を当てました。

マロン学長「甘い物へ来ない行動だけで、甘さを感じていないと決めたわけじゃないんだね。」

受容体は2つの部品でできる

げっ歯類や霊長類では、主な甘味受容体はT1R2とT1R3という2つのタンパク質が組になってできます。受容体は、舌の細胞が外から来た刺激を受け取る入口のようなものです。

タンパク質の名前はT1R2とT1R3、それを作る設計情報となる遺伝子は Tas1r2 と Tas1r3 と表します。似ていますが、研究結果を読むときは区別します。

2つが組になって働くなら、どちらか片方に大きな変化があるだけでも、同じ形の甘味受容体を作れない可能性があります。研究チームは猫の2遺伝子を取り出し、配列と味蕾での発現を調べました。

この論文の中心は、甘味刺激を与える行動実験ではなく、甘味受容体の設計と発現を調べる分子研究です。

「感じない」をどこまで言えるか

論文は、猫に主な甘味受容体を作るための機能的なT1R2がなく、これが甘味刺激への反応の乏しさを説明する最も単純な仮説だとしています。

一方、猫の主観を直接尋ねることはできません。この研究だけから、あらゆる甘味物質、濃度、個体、状況で感覚が完全にゼロだと測定したことにはなりません。

「猫は甘味に反応しにくい。その背景に主な甘味受容体を作れない仕組みがある」と表すと、研究結果と限界の両方を保てます。

また、猫がケーキやクリームへ近づくことと矛盾もしません。その食べ物には、甘味以外の匂い、脂肪、食感、温度など多くの手がかりがあります。個々の行動理由は、この遺伝子研究では調べていません。

今日からできること

  • 猫の食べ物への反応を「甘いから」の一言で決めない
  • 「好み」「検出」「受容体」の3つを分けて記事を読む

まとめ会話

マロン学長「猫の味覚全部が弱いんじゃなく、甘味の入口に注目した研究なんだね。」 いち教授「その通りだよ。好まない行動と、受容体が作れない仕組みも分けて読もう。」 マロン学長「次は設計図のどこが違ったのか知りたい!」 いち教授「247塩基対の欠失から、DNAの読み方がどう変わるか見てみよう。」

次回予告

第2回は、Tas1r2 の247塩基対欠失と終止コドンを論文の方法から読みます。

参考文献

Li X, et al. Pseudogenization of a Sweet-Receptor Gene Accounts for Cats’ Indifference toward Sugar. PLoS Genetics. 2005;1(1):e3. https://doi.org/10.1371/journal.pgen.0010003

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