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ネコフリークス大学Neko Freaks University
講座030第1回 / 全5回

猫にも「性格」があるって、本当?

猫の気質・性格研究がどのように始まり、どんな枠組みで捉えられてきたのかを紹介します。43本の研究レビューの背景を整理します。

いち教授
いち教授
講座030

導入会話

マロン学長「うちの子って、初対面の人にはすぐ寄っていくのに、掃除機には全力で逃げるんだよね。これって『性格』って言っていいのかな。」

いち教授「実はそれ、研究の世界でも長く議論されてきたテーマなんだ。動物に人間のような『性格』があると言えるのか、というね。」

この回でわかること

  • 動物に安定した「性格」の違いがあることは、近年広く認められている
  • この論文は1986〜2020年の43本の研究をまとめたレビューである
  • 猫の気質は「大胆さ」「探索・回避」「活動性」「社会性」「攻撃性」という5つの次元で捉えられることがある

「うちの子、こういう性格だよね」は、科学的に正しい?

かつては、動物に「性格」や「気質」という概念を当てはめること自体、科学的に慎重であるべきだという意見がありました。しかし近年は、多くの動物種で「時間や状況が変わっても安定している、個体ごとの行動の違い」があることが広く認められるようになっています。

マロン学長「掃除機が怖いのは、性格じゃなくて単なる経験じゃないの?」

いち教授「経験も関係するけど、同じ経験をしても猫によって反応の強さが違うことがあるんだ。今日紹介するTravnik et al.(2020)のレビュー論文は、1986年から2020年までに発表された43本の研究をまとめて、猫の気質研究がどう進んできたかを整理しているんだよ。」

このレビューが扱うのは3つの範囲です。気質がどんな遺伝的・発達的・生理的な仕組みから生まれるのか、気質をどう測るのか、そして気質が人と猫の関係や福祉にどう関わるのか。猫だけを対象にした気質研究をまとめた包括的なレビューは、この論文が初めてだとされています。

「気質」「性格」「コーピングスタイル」、いろいろな呼び方

この論文では、「temperament(気質)」と「personality(性格)」という2つの言葉が、動物研究ではほぼ同じ意味で使われていることが説明されています。似た言葉に「コーピングスタイル(ストレスへの対処スタイル)」もあります。

コーピングスタイルは、ストレスになりうる出来事への反応の個体差を指します。積極的に対処するタイプは攻撃的・活発に反応し、受動的なタイプは柔軟で防御的に反応する。これが「大胆」と「内気」というよく知られた分け方に、おおむね対応しています。掃除機から全力で逃げる猫と、少し離れて様子を見る猫の違いは、この軸で説明されることがあります。

マロン学長「呼び方はいろいろあるけど、結局『その子らしさ』ってことだよね。」

いち教授「そうだね。研究者たちは、動物の気質を5つの大きな次元で捉える枠組みを提案しているよ。シャイネス・ボールドネス(大胆さ)、探索・回避、活動性、社会性、攻撃性の5つだよ。」

5つの次元は、それぞれ違う場面への反応を見ています。大胆さは危険を伴う状況、探索・回避は新しい状況、活動性は日常の運動量、社会性は同じ種の仲間がいる時といない時、攻撃性は対立する場面での反応です。「人にはすぐ寄るけれど掃除機は怖い」という猫は、社会性が高く、大胆さの軸では内気寄り、と別々の次元で見ることができます。一つの言葉で性格をまとめないことが、この枠組みの利点です。

この論文は、性格診断ではない

この論文はレビュー(既存研究のまとめ)であり、特定の猫の性格を診断するテストではありません。あくまで、これまで積み重ねられてきた研究を俯瞰し、猫の気質がどう定義され、何によって形づくられ、どう測定されてきたかを整理したものです。

43本の研究の中では、気質の次元を表す言葉が全部で49種類も使われていました。研究者ごとに呼び方も切り分け方も違うということです。この講座で「人懐こさ」「大胆さ」といった言葉を使う時も、それが唯一の正しい分け方ではないことを覚えておいてください。

今日からできること

  • 「うちの子は臆病」と一言でまとめず、人・新しい物・音・同居猫など場面ごとに反応を分けて見る
  • 同じ出来事への反応が、以前と変わっていないかを振り返る
  • 性格の話を「診断」ではなく「観察の整理」として使う

まとめ会話

マロン学長「うちの子の性格、ちゃんと研究の裏付けがあるものなんだね。」

いち教授「そう。次回は、この気質がどこから来るのか、遺伝や幼少期の経験について詳しく見ていこう。」

次回予告

第2回は、猫の気質が遺伝や幼少期の経験からどう形づくられるのかを見ていきます。

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