キャットニップに反応しないのは珍しい?
キャットニップへ反応しない猫が一定数いることと、研究で使う陽性反応の定義、無反応を失敗にしない見方を学びます。

導入会話
マロン学長「キャットニップを置いても見向きもしない猫がいるって聞いたよ。嗅覚が悪いのかな?」
はち助教授「無反応だけで異常とは言えないわ。まず研究が何を『反応』と数えたか見ましょう。」
この回でわかること
- キャットニップ非反応は一定数いること
- 研究で使う「陽性反応」の定義
- 無反応を失敗にしない観察方法
研究では約3匹に1匹が非反応
Bolら(2017)の研究では、保護施設や家庭などで暮らす生後6か月以上の猫100匹へキャットニップなどを提示しました。キャットニップへ陽性反応を示したのは68%で、約3匹に1匹は陽性反応を示しませんでした。
この割合は、著者らが引く過去の三つの研究とも近い値でした。過去の研究では非反応が35%、28%、18%と報告され、三つを合わせると170匹中53匹、31%になります。今回の研究の32%とほぼ同じで、「反応しない猫が3匹に1匹ほどいる」ことは、この研究だけの偶然ではなさそうです。
ただし、100匹の多くはサンクチュアリやシェルターで暮らす猫です。この68%を、世界中の家庭猫へそのまま当てはまる正確な割合とは考えません。
そもそもキャットニップに反応するのはなぜ?
論文の背景には、植物側の事情が書かれています。キャットニップやマタタビが出す成分は、もともと葉を食べる虫を遠ざけたり、その虫を食べる生き物を呼んだりするためのものと考えられています。猫がそれに反応するのは、いわば偶然の巡り合わせです。
キャットニップの効果はにおいによるもので、味ではないとされています。ライオンやジャガーなど多くの大型ネコ科も反応しますが、トラはほとんど反応しないことも知られていました。同じネコの仲間でも反応の有無に幅がある、というのが出発点です。
「反応」の中身
研究では、嗅ぐ・なめることに加え、あごや頬をこする、転がる行動が10秒を超える時などを陽性にしました。最低2回提示してもこの基準へ届かなければ非反応です。
反応の行動は表にまとめられていて、嗅ぐ、なめる、くわえて頭を振る、あごや頬をこする、背中を床につけて転がる、後ろ足で蹴る、が含まれます。よだれが出る猫もいました。研究ではさらに、嗅ぐ・なめるだけが15秒を超えて続いた場合を「軽い反応」、こすったり転がったりが10秒を超えた場合を「強い反応」と分けています。
一度ちらりと嗅いで離れた猫を「嗅覚がない」と判定したわけではありません。キャットニップに対する特定の行動パターンが研究基準を満たさなかった、という意味です。
マロン学長「反応しないのは、嫌いってこと?」
はち助教授「それも決められないわ。無反応は、好みや気持ちの直接測定ではないの。」
日常の無反応をどう見るか
猫が少し嗅いで離れる、全く近づかない、こすらずに座っている。どれも観察できる行動です。反応を出そうと量を増やしたり、顔へ近づけたりすると、猫の選択が見えなくなります。
研究でも、猫が刺激に気づいていないように見えた時は、一度だけ見える場所に置き直すことはしましたが、歩き去った猫のもとへ置き直すことはしていません。猫が離れたら、それを終点にする姿勢は研究と家庭で同じです。
キャットニップ以外にも、遊び、箱、高い場所、探索など、猫が自分から選べる刺激はあります。反応しないことは、エンリッチメントの失敗でもありません。
今日からできること
- 「効かない」ではなく、嗅ぐ・こする・転がる・離れるを分けて記録する
- 反応を引き出すために量を増やさない
- 猫が近づかなくても、その選択を尊重する
まとめ会話
マロン学長「無反応は異常の証拠じゃなくて、この刺激を選ばなかったという観察なんだね。」
はち助教授「そうよ。次は100匹へ四種類をどう提示したか、比較の土台を確かめるわよ。」
次回予告
量も形も違う四種類を、研究はどのように提示したのでしょう。