外に出す/出さないの二択ではない
自由な屋外アクセス、囲われた屋外空間、完全室内を別の条件として整理し、猫が外でしている行動を観察します。

導入会話
マロン学長「猫を外へ自由に出すか、ずっと室内にするか。その二つから選ぶ話?」
はち助教授「この研究が見たのは、その間にある“囲われた屋外空間”なの。まず選択肢を三つに分けましょう。」
この回でわかること
- 自由な屋外・囲われた屋外・完全室内は別の条件であること
- 「囲い」と呼ばれる設備の幅
- この研究が安全性能を比べたものではないこと
外に出すことのリスクと、出さないことのリスク
de AssisとMills(2021)の論文は、猫の飼い方に決まった答えがないところから始まります。多くの国では猫が自由に外へ出ることが文化として受け入れられ、探索や狩りといった自然な行動につながると考えられてきました。一方で、外に出る猫は感染症、けんか、盗難、交通事故のリスクにさらされます。英国では交通事故が猫の死因の6位、5歳未満では2位とされています。野生動物への影響も、大きな論点になっています。
野生動物への影響については、英国で1997年の5か月間におよそ9,200万匹の動物が猫に捕られたという推定や、オーストラリアで外に出る飼い猫1匹あたり年間186匹の爬虫類・鳥・哺乳類を捕るという報告が引かれています。生態学者と猫の愛好家の間で「猫戦争」と呼ばれる論争が起きているのも無理はない、と著者らは書いています。
著者らは、完全室内飼いにも別のリスクがあると書いています。室内だけの暮らしは欲求不満や望ましくない行動につながることがあり、多頭飼いではとくに難しくなる、という先行研究の指摘です。どちらを選んでも何かを失う、という前提が、この研究の出発点になっています。
先行研究では、猫をまったく、あるいは時々しか閉じ込めない飼い主ほど、猫には外に出る強い身体的・感情的な必要があると考え、自分が猫を閉じ込められる自信も低い傾向があったとされます。飼い主の信念が飼い方を決める大きな要素になっている、というのが著者らの見立てです。
その間にある「囲われた屋外空間」
敷地境界のフェンス、独立した屋外囲い、建物につながるキャティオは、猫が屋外の空気や場所へ接する一方、行動範囲を物理的に区切る選択肢です。著者らは、こうした設備が猫の福祉や飼い主の受け止め方にどう関わるかは、ほとんど研究されていなかったと述べています。
この研究では、英国の一企業が販売する三種類の設備を買った人に質問しています。既存のフェンスの上に取りつけて庭全体を囲う形、独立した囲いを作る形、家の窓や扉につなげるキャティオの形です。
ただし「囲い」と呼んでも構造、広さ、施工、監督は同じではありません。この研究も、安全性能や脱走率を比べたものではありません。
マロン学長「囲いがあれば安心、って一言では言えないんだね。」
はち助教授「そう。どんな囲いを、どんな庭に、誰が管理するかで、まったく別の話になるのよ。」
三つの条件を分けてから読む
自由に外へ出る猫、囲いの中で外に出る猫、外に出ない猫では、経験するものも、飼い主が心配することも違います。この研究の回答者は、もともと外に出ていた猫を囲いの中へ移した人が多く、外に出ていなかった猫を囲いに出した人もいます。同じ「導入後」でも、出発点が違えば変化の意味も変わります。
まず、自由な屋外アクセス・囲われた屋外空間・完全室内を別の条件として考えます。
今日からできること
- 現在の屋外アクセスが自由、監督つき、囲いあり、なしのどれか書く
- 猫が外でしている行動を「外が好き」の一語にせず記録する
- 変えたいのが猫の選択肢か、人の心配か、安全運用かを分ける
まとめ会話
マロン学長「出す・出さないの前に、今どの条件にいるかを書くところからなんだね。」
はち助教授「ええ。次は、この調査に答えたのがどんな人たちだったかを見るわよ。」
次回予告
この研究へ回答した飼い主が、一般の飼い主とどう違う可能性があるかを見ます。