「78.3%で屋外時間が増えた」は安全の証明?
屋外アクセス増加と飼い主の懸念低下を、事故・脱走の実測や猫の客観的幸福と分けて読みます。

導入会話
マロン学長「382人中299人が屋外アクセス増加。それなら効果ありと言っていい?」
はち助教授「“増えたと答えた”ことと、安全や幸福が増えたことは別なの。何が測られて、何が測られていないかを見ましょう。」
この回でわかること
- 導入後に報告された屋外時間と懸念の変化
- 回顧回答であることの意味
- 「安心した」と「安全になった」の違い
屋外時間は増え、他猫の侵入は減ったと報告された
299人(78.3%)は、導入後に猫の屋外アクセスが増えたと振り返りました。導入後の屋外時間を答えた380匹では、98%以上が1日1時間を超えていました。著者らは、屋外時間はおおむね2倍以上になったと書いています。
他猫が庭へ来る頻度の中央値は「週1回超」から「月1回未満」へ下がりました。庭の大部分を囲う広い設備ほど、他猫の侵入が減ったと報告されています。道路での負傷・死亡、迷子、盗難など10項目への飼い主の懸念も、すべて低下しました。
三種類の設備の間で、屋外時間の変化に差はありませんでした。飼い主の心配の変化で唯一差があったのは「迷子」で、既存のフェンスに取りつけるタイプの人は、独立した囲いの人より心配が残っていました。前者は元のフェンスの状態に左右されるためかもしれない、と著者らは考えています。咬み傷やひっかき傷に悩んでいた家庭のうち、3分の1ほどは導入後に減ったと答えました。
行動の変化も飼い主の記憶による
飼い主が「減った」と答えた行動には、家の中での粗相、不安そうな様子、夜間に飼い主を起こすことなどがあり、それぞれ3分の1ほどの家庭が減少を報告しました。理由の分からない気分の変化やいらいらは4分の1ほどが減ったと答え、飼い主のそばでくつろぎながら活動する様子は4分の1ほどが増えたと答えています。
一方、狩りについては増えた人と減った人がそれぞれ15%ほどで、3分の1は変わらないと答えました。著者らは、囲いの場所ごとに獲物の量が違うためだろう、あるいは以前は獲物を家に持ち帰らなければ気づかなかっただけかもしれない、と二つの説明を挙げています。
マロン学長「減ったと答えた人が多い項目もあれば、ばらばらな項目もあるんだね。」
はち助教授「そう。そしてどれも、導入前を思い出して答えた変化なのよ。」
懸念の低下は、質問した10項目のすべてで統計的に有意でした(各p<0.001)。ただし382人が「以前より心配が減った」と答えたという意味で、心配していた出来事が実際に減ったことを確かめた数字ではありません。
測っていないこと
しかし実際の事故件数、脱走、転落は測っていません。導入しなかった家庭もなく、導入前の回答を先に取ったわけでもありません。約2年以内の過去を思い出して「減った・変わらない・増えた」を選ぶ形式で、猫を直接観察した研究ではありません。
著者らも、対照群がないこと、導入前後を別々に測ったのではなく記憶に頼ったことを限界として挙げ、導入前後を客観的に測る追跡研究を次の段階として勧めています。
飼い主が安心したという結果を、設備が安全を保証したという結果へ置き換えません。
今日からできること
- 「飼い主の回答」と「猫の直接測定」を見分ける
- 事故や脱走が実測されたか本文で確認する
- 増やしたい時間ではなく、猫が何を選べるようにしたいか書く
まとめ会話
マロン学長「心配が減ったのは本当でも、事故が減ったかは測っていないんだね。」
はち助教授「ええ。次は、この研究が新しく作った福祉の尺度と、表の数字の食い違いを見ていくわよ。」
次回予告
研究が作った4つの福祉下位尺度と、表の数値不一致を確認します。