見てくれないと、学んでいない?
子猫が人の見本へ反応しない時、見ていない・近づかない・触れない・同じ動作をしないを分けて考えます。子犬やオオカミの子との比較研究から、反応を能力判定にしない読み方を整理します。

導入会話
マロン学長「人がやって見せたのに、猫が同じことをしてくれない時ってあるよね。見ていなかったのかな?」
いち教授「一つの反応だけでは決められないよ。まず、見たか、近づいたか、触れたかを分けよう。」
マロン学長「同じ動きをしたかは、その後に見るんだね。」
いち教授「そうなんだ。順番を分けると、研究の結果を強く言いすぎずに読めるよ。」
この回でわかること
- 見ることと動作を合わせることは別の段階
- 反応がない理由を能力だけで決められない
- この研究が調べた範囲
反応は一段で起きるわけではない
人が物へ手を伸ばすところを猫へ見せたとします。猫が同じように前足を出すまでには、少なくともいくつかの段階があります。
人や物へ頭を向ける。物へ近づく。物へ触れる。鼻か前足のどちらを使う。この研究は、これらを別々に記録しました。
「見た」と「同じ動作をした」を一つにまとめないことが、最初のポイントです。人へ顔を向けても物へ触れない猫もいれば、物へ近づいても実演とは違う身体部位を使う猫もいます。
マロン学長「反応が途中で止まっても、どの段階だったかで意味が変わるんだね。」
この研究が見せたのは短い未知物課題
Fugazzaらの研究では、約12〜14週齢の子犬、子猫、オオカミの子が参加しました。人は、対象が見たことのない箱か樹脂製玩具へ、鼻または手で触れました。
観察時間は最長25秒です。猫が飼い主の日常動作を長期間見て覚えるか、家族の習慣を理解するかを調べたものではありません。
特定の年齢、物、距離、実演を使った短い実験です。家庭で見られるあらゆる社会学習へ、そのまま広げることはできません。
見ないことにも複数の背景がある
対象が実演側へ頭を向けなかった場合でも、学ぶ力がないとは決められません。物そのものへ関心がない、周囲を見ていた、実演者より別の動きが目立った、試行を重ねて慣れたなど、複数の可能性があります。
実際、この研究では3種とも、試行を重ねると実演側を見る確率が下がりました。著者らは、同じ実演が繰り返され、食べ物などの結果がなかったため、慣れが関係した可能性を挙げています。
見ないことを「理解できない」と読み替えない姿勢が必要です。
比較は知能の順位ではない
研究は3種の行動差を比べましたが、知能全体を順位づけたものではありません。犬、猫、オオカミでは、祖先の社会構造、人との歴史、育てられ方、物への関心が異なります。
一つの課題でよく反応した種が、すべての学習課題で優れているとは限りません。今回比べたのは、人の短い実演を見た後、未知の物へ鼻か前足で触れたかという範囲です。
今日からできること
- 猫の反応を「見る・近づく・触れる」の順に分けて観察する
- 反応しない時に、分かっていないと決めず追わずに終える
まとめ会話
マロン学長「人を見なかった、物へ触れなかった、同じ動きをしなかったは、全部別なんだね。」
いち教授「その通りだよ。一つの反応から学習能力や関係性まで決めないことが大切なんだ。」
マロン学長「次は、研究でどうやって段階を分けたのか知りたいな。」
いち教授「対象数と実験条件を見れば、結果の届く範囲がもっと分かるよ。」
次回予告
第2回は、42・39・8匹の対象と、自由探索・実演・ゴースト条件を読みます。
参考文献
- Fugazza C, et al. Spontaneous action matching in dog puppies, kittens and wolf pups. Scientific Reports. 2023;13:2094. https://doi.org/10.1038/s41598-023-28959-5