「何週で迎える?」を一つの数字にしない
研究上の早期離乳の定義と、離乳・母猫からの分離・新居への移動の違いを確認します。

導入会話
マロン学長「8週、12週、14週のどれが正解なのかな?」
はち助教授「数字だけじゃなくて、研究が何を離乳と呼んだかを見るわよ。そこを飛ばすと、週齢が呪文になってしまうの。」
この回でわかること
- 研究が「離乳」と呼んだもの
- 早期離乳が問題になると考えられてきた理由
- 週齢を一つの正解にしない理由
「離乳」は母猫から永久に離れた時期
Aholaら(2017)の論文は、母猫から永久に離れた時期を尋ね、12週未満を早期離乳と定義しました。12〜13週齢を著者らが「推奨する離乳齢」とする群、14週齢以上を後期離乳の群としています。回答は8週未満、8〜9週、10〜11週、12〜13週、14〜15週、16週〜1歳、成猫時、未離乳、不明の9区分でした。
離乳、母猫・同腹子からの分離、新しい家への移動は本来別の出来事です。乳を飲まなくなる時期、母猫や兄弟と離れる時期、家が変わる時期は、同じ日とは限りません。この研究は「母猫から永久に離れた」時期を一つの数字で聞いているため、その数字にはいくつもの出来事が重なっています。
なぜ早期離乳が問題だと考えられてきたか
論文の導入部は、実験動物の研究を引いています。母親から早く離された動物では、ストレス反応に関わる神経内分泌の変化、記憶や学習、社会的な学びへの影響、攻撃や不安、常同行動(同じ動作を変化なく繰り返す行動)のリスク上昇が報告されてきました。ただし、すべての研究で同じ結果が出たわけではなく、初期の適度なストレスが後のストレス耐性と結びつくという報告もあります。
野外で暮らす猫の子猫は4〜8週齢で乳を離れますが、生後4か月ほどまでは母猫とともに過ごすことが多いとされます。一方、猫の社会化の重要な時期は2〜8週齢とされ、8週齢で母猫や兄弟から離すことは一般的に行われています。著者らは、社会化の時期が終わった直後に離すというこの慣習が、行動に影響していないかを問いました。
マロン学長「野外だと4か月まで一緒なのに、飼い猫は8週で離されることが多いんだね。」
はち助教授「そのずれを、大きな質問票で調べたのがこの研究なの。」
先行研究の結果もそろってはいません。実験室で母猫や兄弟から隔離して育てた子猫では、社会行動、不安、新しい物への慣れ、攻撃に差が報告された一方、6週齢と12週齢で離した実験室の猫で攻撃に差がなかった研究もあります。バーマンという品種では早期離乳とウールサッキング(毛布などを吸う・噛む行動)の相関が報告されています。この研究は、こうしたばらつく結果を、家庭の猫の大きな標本で確かめようとしたものです。
14週は「提案」であって「境界線」ではない
著者らは結論で、離乳を遅らせることが多くの家庭猫の福祉を改善する簡便で費用の少ない方法になり得る、と提案しています。この提案が「14週まで待つべき」という言い方で広まることがあります。
しかし、この研究は次回以降で見るように、飼い主が過去を振り返って答えた質問票の横断研究です。著者ら自身が、観察された行動の差の原因が早期離乳だとは結論できないと明記しています。14週という数字は、この標本で後期離乳の群に見られた関連から著者らが導いた提案で、個々の子猫の行動を保証する線ではありません。
14週は著者の提案で、すべての子猫の行動を保証する境界線ではありません。
今日からできること
- 週齢と一緒に母猫・同腹子との生活と離乳の進み方を確認する
- 不明な来歴を推測で埋めない
まとめ会話
マロン学長「週齢の数字には、いろんな出来事が混ざっているんだね。」
はち助教授「そうよ。次は、その数字をどう集めたかを見ましょう。7,397匹から始まる質問票の話よ。」
次回予告
7,397匹から5,726匹へ絞った質問票の作り方を読みます。