5,726匹の質問票はどう作られた?
オンライン質問票の募集・除外・行動の線引きと、結果ごとに異なる対象数を確認します。

導入会話
はち助教授「5,726匹すべてを研究者が観察したわけではないの。」
マロン学長「飼い主が答えたオンライン質問票なんだね。誰が答えたかで、読み方が変わりそう。」
この回でわかること
- 質問票の集め方と絞り込み
- 「あり」と数えた基準
- 大規模でも残る偏り
Facebookと品種団体で募集した
質問票はフィンランドの家庭猫について、健康、生活条件、行動を集める多項選択式のオンライン調査で、2012年12月に公開され、Facebookと猫の品種団体を通じて告知されました。多くの飼い主とブリーダーが参加した、いわば市民科学型の研究です。
元データは7,397匹でした。性格の項目が欠けていた352匹、離乳時期の回答がなかった60匹、離乳時期が「不明」だった936匹、その他の説明変数が欠けた302匹、年齢が明らかに誤っていた21匹を除き、5,726匹を解析しました。行動によって対象数は違い、ウールサッキング(毛布などを吸う・噛む行動)は4,925匹、過剰な毛づくろいは5,683匹、行動問題は5,550匹です。
離乳時期が「不明」の猫が900匹以上除かれたことは、覚えておきたい点です。来歴の分からない猫、たとえば保護された成猫の多くは、この研究に含まれていません。
5段階の回答を「あり・なし」に分けた
飼い主は、活動の水準、人との接触、家族・見知らぬ人・他の猫への攻撃、新しい物への怖がりを5段階で評価しました。自分の体をなめる・噛む・吸う程度も同じ尺度です。ウールサッキングは「一度もない」から「ほぼ一日中」までの8段階、行動上の問題は「いいえ」「はい、飼い主の評価」「はい、獣医師が診断」から選びました。
解析では、攻撃と怖がりは5段階の2〜5を「あり」、過剰な毛づくろいは4〜5を「あり」としました。「少し攻撃的」も「あり」に入る一方、毛づくろいは強い方だけが「あり」です。ウールサッキングは月1〜4回以上を「あり」とし、生涯に数回、年に数回といった軽い例は解析から外されました。
マロン学長「『少し』でも攻撃ありに入るなら、割合は大きく見えそうだね。」
はち助教授「そうなの。5,726匹の41%が他の猫に少なくとも『少し』攻撃的、という数字は、その基準で読むのよ。」
性格を三つの因子にまとめた
性格の項目は統計的に整理され、攻撃性、怖がり、外向性の三つの因子にまとまりました。この因子は後の解析で、離乳時期の効果を見る時に一緒に入れたり外したりされています。第4回で見る「性格因子を入れると差が小さくなった」という結果は、この因子のことです。
大規模でも残る偏り
行動は5段階の回答を二値化し、対象数は結果ごとに4,925〜5,726匹です。著者らは限界として、質問票には主観が入ること、オンライン募集は猫に強い関心のある人やSNS利用者が回答しやすい便宜的な標本であること、純血種の割合が高いこと、早期離乳群の割合が低いことを挙げています。
母猫の養育のしかた、離乳前の住環境、社会化の中身、離乳後の環境は質問しておらず、これらと離乳時期がどう絡んでいるかは評価できませんでした。
大規模でも、飼い主の回想、主観、参加しやすい人の偏りは残ります。
今日からできること
- 数字は質問と「あり」の基準を一緒に読む
- 結果ごとの対象数を確認する
まとめ会話
マロン学長「5,726匹は大きいけど、答えたのは飼い主で、来歴不明の猫は入っていないんだね。」
はち助教授「その土台を持って、次は8週未満の群で何が違ったかを見るわよ。」
次回予告
8週未満と12〜13週で何が違ったかを確認します。