462人は誰だった?
猫関連媒体から集まった回答者の特徴と、世帯単位の質問、多数比較の条件を確認します。

導入会話
マロン学長「462人はオランダ全体を代表するの?」
いち教授「募集場所と回答者の特徴を見よう。この調査は、猫に関心の強い人が集まりやすい経路で募っているんだ。」
この回でわかること
- 回答者の集め方と特徴
- 「世帯単位」の質問という設計
- 統計の条件
猫関連の媒体で募集した
質問票はオンラインで作られ、オランダの猫関連ニュースレターとFacebookの猫関連アカウントで案内されました。さらに、以前の研究に参加して次回も協力すると答えていた飼い主545人には直接メールを送っています。回答期間は2020年1月15日から3月30日でした。
638人が回答を始め、601人が質問の75%以上に答え、行動・頭数・屋外アクセス・飼い主と猫の特徴がそろった462人が分析対象になりました。
回答者の特徴
回答者は女性91%、36〜55歳が53%、高学歴67%でした。猫に関わる仕事をしている人が22%で、獣医師、動物看護職、猫行動家、保護施設の職員などが含まれます。多頭世帯が69%、平均の頭数は2.4匹で、最大14匹の家もありました。著者らが比較したオランダの平均1.6匹より多い標本です。
屋外アクセスは、無制限が16%、時間や場所を制限したアクセスが62%、なしが22%でした。「制限あり」には、日中のみ、飼い主が扉を開ける時のみ、囲われた庭、キャティオなど、かなり違う条件が一つの群に入っています。
マロン学長「猫の仕事をしている人が5人に1人って、多いね。」
いち教授「そうだね。行動をよく見ている人が多い分、一般の飼い主の答えとは少し違うかもしれない。」
「その家の猫のどれかが」という単位
多頭世帯の主分析は、その世帯のどれかの猫が行動したかという単位です。3匹いる家で1匹がスプレーをしていれば、その家は「スプレーあり」になります。猫の数が多い家ほど「あり」になりやすいのは、行動の増加ではなく、数える猫が多いことによる面もあります。次回の「多頭で多い」という結果を読む時、この単位を忘れないようにします。
質問票には、31行動のほかに、問題が起きた時の相談先、猫の行動を変えることへの態度、猫の行動療法についての知識と経験、飼い主と猫の基本情報、住まいの環境も含まれていました。この講座で扱うのは、そのうち行動の報告と頭数・屋外アクセスの部分です。
統計の条件
31行動それぞれについて、単頭と多頭、屋外アクセスの3群で報告割合を比べています。31行動の群差には多重比較補正、効果量、信頼区間もありません。31回以上の比較を通常の5%水準で行えば、偶然だけでもいくつかは「差あり」と出ます。著者らも、飼い主の年齢層や学歴、子どもの有無が頭数や屋外アクセスと関連していたことを認めていますが、関連が小さいとして調整には入れていません。
行動のまとまりは探索的因子分析という方法で調べています。研究はフローニンゲン大学の倫理委員会の承認を受け、資金提供や利益相反はなく、AIを使わず執筆したと記載されています。
こうした条件は、研究の価値を下げるものではありません。猫をよく観察している人たちが、どんな行動を「問題」として見ているかを知る材料としては、むしろ向いています。ただし、一般の飼い主の家で同じ割合になるとは考えません。
人数だけでなく、募集元、回答単位、統計の条件を確認します。
今日からできること
- 誰がどこで募集されたかを見る
- 世帯割合か個体割合かを確認する
- 多数比較の補正と効果量を見る
まとめ会話
マロン学長「猫好きで多頭飼いの人が多い標本で、家ごとに聞いた調査なんだね。」
いち教授「その前提で、次は単頭と多頭でどんな行動の報告が違ったかを見よう。」
次回予告
単頭と多頭で異なった10の報告を読みます。