多頭で多い行動、単頭で多い行動
単頭・多頭で異なった報告を、世帯割合と猫一匹の発生率を混同せずに読みます。

導入会話
マロン学長「多頭だと全部の問題が増えた?」
いち教授「単頭で多い報告もあり、方向は一つではないよ。まず、全体でよく報告された行動から見よう。」
この回でわかること
- 全体で多く報告された行動
- 多頭で多い報告と単頭で多い報告
- 世帯割合を個体の発生率にしない理由
4人に1人以上が報告した行動
全体の少なくとも25%の飼い主が報告したのは、家電への恐れ51%、花火への恐れ46%、望ましくない物への爪とぎ45%、観葉植物や花を食べる43%、来客への恐れ39%、過剰な鳴き28%、抱き上げを許さない26%、尿のトイレ外排泄26%でした。多頭世帯では、同居猫を追う行動が34%から報告されています。
一方、凝視、通路や資源をふさぐ、同居猫への恐れといった目立ちにくい猫同士の行動を報告した飼い主は10%未満でした。著者らは、追う、威嚇する、噛むといった目立つ行動は気づかれやすい一方、静かな回避やふさぐ行動は見落とされやすい、と考えています。
多頭で多く報告された8行動
多頭世帯では、室内スプレー(19%対6%)、尿のトイレ外排泄(31%対16%)、便のトイレ外排泄(18%対7%)、異食(23%対10%)、皮膚の損傷がない過剰な毛づくろい(14%対6%)、飼い主への恐れ(6%対0%)、来客への恐れ(43%対30%)、家電への恐れ(55%対41%)が多く報告されました。
単頭で多く報告された2行動
単頭世帯では、飼い主への攻撃(16%対6%)と来客への攻撃(10%対2%)が多い結果でした。著者らは考察で、早期の離乳や飼い主との接触の量が関わる可能性を挙げていますが、この研究はそれらを測っておらず、説明は仮説にとどまります。
マロン学長「多頭の家は排泄やこわがりが多くて、1匹の家は人への攻撃が多いんだね。」
いち教授「報告として、だよ。1匹の家では、猫が向ける相手が人しかいない、という見方もできる。」
世帯の割合であって、猫一匹の発生率ではない
これらは世帯の有無であり、猫一匹の発生率や頭数の因果効果ではありません。前回見たように、多頭世帯では「どれかの猫が」示したかを聞いているので、猫が多いほど「あり」になりやすい構造があります。2匹の家と14匹の家が同じ「多頭」に入っていることも思い出しておきます。
著者らは、多頭世帯には猫同士の関係という課題が、単頭世帯には人との関係という課題が、それぞれ別の形で表れているのかもしれない、と読んでいます。ただし、どちらが猫にとってつらいか、どちらの飼い方がよいかを比べた研究ではありません。
多頭で報告が多かった三つの「恐れ」についても、著者らは来客と家電への恐れが一つにまとまることを見つけ、子猫の時期の社会化や慣れとの関係を考察しています。ただし、多頭の家で恐れが多い理由が、猫の数なのか、数える猫が多いからなのか、家の条件なのかは分けられません。
原著の数と列挙が合わない
原著は9行動と書きますが、列挙は計10行動です。結果の節では「9行動に差があった」と述べているのに、本文で挙げられているのは多頭で8行動、単頭で2行動です。この講座では、本文に数値とともに列挙された10行動を使い、「9」という数は根拠にしません。
差の方向、分析単位、原著の不一致を一緒に残します。
今日からできること
- 世帯割合を個体リスクへ変えない
- 排泄、スプレー、攻撃を別々に記録する
- 原著の総数と列挙数を照合する
まとめ会話
マロン学長「多頭と単頭で、報告される行動の種類が違うんだね。でも家ごとの数字なんだ。」
いち教授「そう。次は、屋外アクセスと、行動のまとまりを原因や診断にしない読み方を見よう。」
次回予告
屋外アクセスと7因子を原因にしない読み方です。