0.101と0.059——「ほぼ半分」をどう読む?
2群の毛中コルチゾール平均と中央値、統計的な群差を慎重に読みます。

導入会話
マロン学長「0.101から0.059なら、ストレスが42%減ったって言っていい?」
はち助教授「平均の差は約42%よ。でも、同じ猫の変化でも、ストレスそのものの量でもないわ。」
この回でわかること
- 2群の平均は0.101 ng/mgと0.059 ng/mg
- 分布にも統計的な群差があった
- 個体の42%低下とは表現できない
平均と中央値の両方を見る
標準環境群103匹の平均は0.101 ng/mg、中央値は0.116 ng/mgでした。資源増加後群76匹の平均は0.059 ng/mg、中央値は0.053 ng/mgです。Mann–Whitney U検定ではZ=4.893、p=0.000001で、群の分布に統計的な差があると報告されました。
平均値を比べると、資源増加後群は約42%低い値です。論文の要約では「ほぼ半分」と説明されています。
標準環境群の範囲は0.016〜0.319 ng/mg、中央50%は0.039〜0.126でした。資源増加後群の範囲は0.009〜0.140、中央50%は0.037〜0.075でした。分布は重なっており、標準環境の全個体が高く、資源増加後の全個体が低かったわけではありません。
マロン学長「群としてはかなり違って見えるね。」
差があることと、原因が確定することは別
統計的な差は、観察された群差が偶然のばらつきだけでは説明しにくいことを示します。しかし、何が差を生んだかまでは示しません。2群は別の猫で、年齢や健康状態なども個体ごとに調整していません。
言えるのは「資源増加後の別集団で毛中コルチゾールが低かった」までです。「環境改善で各猫のストレスが42%減った」とは言えません。
ng/mgは、毛1mgあたりに何ngのコルチゾールが含まれたかを表す単位です。この数字を家庭猫の合格・不合格ラインにはできません。研究内で、同じ採取・抽出・測定方法を使った2群を比較するための値です。
性別では、標準環境のメス0.101・オス0.102、資源増加後のメス0.062・オス0.056 ng/mgで、統計的な差は確認されませんでした。これも性差が絶対にないという証明ではありません。
サンプル数が違い、背景も十分そろっていないため、平均値だけを見て効果の大きさを確定しません。統計的な群差、分布の重なり、研究設計の限界を一緒に読むことで、数字を暮らしの断定へ変えずに済みます。
今日からできること
- 「平均が低い」と「同じ個体で低下した」を区別する
- p値を、原因や効果の大きさそのものと読まない
まとめ会話
マロン学長「数字の差は本物らしいけど、誰の何が変わったかは別なんだね。」
はち助教授「その通り。次は、環境で何を増やしたのかを見ましょう。」
次回予告
爪とぎ、登る場所、トイレ、採食用おもちゃ。まとめて増やした設計の意味を考えます。