論文要約:猫は夜行性だけじゃない?活動リズム研究を読む
Parker et al. (2019). Animal Biotelemetry, 7, 25

論文の概要
Parker ら(2019)は、室内でグループ生活をする猫の活動と食事に、24時間のリズムがあるかを調べた観察研究です。対象はフランス南部のRoyal Canin猫舎で暮らす成猫14匹で、Chartreux と British Shorthair が含まれています。
この論文の位置付けは、「猫は夜行性か、昼行性か」を一言で決める研究ではありません。猫の活動と食事を24時間連続で記録し、朝夕に山が出やすいのか、食事のタイミングは活動と同じようにリズムを持つのかを確かめた研究です。
結果として、活動には14匹すべてで24時間周期が見られ、12匹では朝と夕方に活動が高まりやすい二峰性の傾向がありました。食事にも朝と夕方の山が見られましたが、活動よりもばらつきが大きく、食べ方はより柔軟だと整理されています。
研究デザイン
研究対象は14匹の去勢・避妊済み成猫です。猫たちは2グループに分けられ、それぞれ春の1週間、24時間連続で観察されました。室内には自然光が入り、温度と湿度は管理され、ドライフードと水は自由摂取でした。
活動量はUWBタグで位置を追跡し、食事はRFIDタグ付きの専用フィーダーと電子スケールで記録しました。猫ごとの移動距離、食事量、食事回数、活動や摂食のピーク時間を、時間帯ごとに解析しています。
ただし、これは家庭猫を広く集めた研究ではありません。Royal Canin猫舎の猫、特定の品種、グループ飼育、自由摂食、スタッフの出入り、毎朝10時のフード補充という条件のもとで得られた結果です。
主な発見
1. 活動は「夜だけ」ではなく、朝夕に山が出やすかった
14匹すべてで、活動に24時間周期のリズムが確認されました。さらに12匹では、活動リズムに12時間周期の山も見られ、朝と夕方に活動が高まりやすい二峰性の傾向が示されています。
活動ピークは、朝5-6時、9-11時、夕方16-18時に見られました。研究者らは、猫を夜行性・昼行性に単純に分けるより、二峰性として見る方がこの集団には合うと考えています。
2. 食事も朝夕に増えたが、活動より柔軟だった
猫たちは1日平均46.4±3.6g、約179kcalのドライフードを食べ、平均約8回の小さな食事に分けていました。食事のピークは朝4-10時と夕方17-21時に見られています。
一方で、食事リズムは活動リズムほど安定していませんでした。24時間周期の食事リズムが見られたのは11匹で、3匹では明確なリズムが確認されませんでした。論文では、猫の食べ方は活動より柔軟だと解釈されています。
3. 人の出入りやフード補充も、活動ピークに関わった可能性がある
朝のピークは日の出前やフード補充前後に重なり、夕方のピークはスタッフの作業終了後や日没前に重なっていました。つまり、光だけでなく、人の動きや食事補充への予測も活動に関わった可能性があります。
家庭で読むなら、「猫は本能で朝夕に動くから仕方ない」と決めるより、飼い主の起床、帰宅、食事、遊び、照明、休息場所といった生活の合図も一緒に見た方が実用的です。
4. 個体差とグループ差は大きかった
1日の移動距離は平均1.74±0.4kmでしたが、個体差は0.54-4.13kmと大きく開いていました。また、2つのグループで活動量に差があり、研究者らはグループ構成や猫同士の関係が影響した可能性にも触れています。
この点は家庭でも重要です。同じ家の猫でも、年齢、性格、同居猫との関係、遊び方、食事の出し方によって、一日のリズムはかなり変わります。
この研究で断定できないこと
この研究だけで、すべての猫の活動リズムを説明することはできません。対象は猫舎の14匹で、屋外アクセスのある猫、単独飼育の猫、高齢猫、病気の猫、家庭ごとの生活リズムとは条件が違います。
また、「朝夕に動くのは自然」と言える場面があっても、急な夜間行動の増加、活動低下、食欲低下、体重変化、鳴き方の変化をリズムだけで片づけるのは危険です。特に高齢猫では、痛み、甲状腺の病気、認知機能の変化などが関わることもあります。
この論文は、夜の運動会を叱るか放置するかを決めるものではなく、活動・食事・人の生活リズムを分けて観察するための手がかりとして使うのが安全です。
数値で見るポイント
- 対象猫は14匹
- 観察期間は各グループ1週間
- 活動は14/14匹で24時間周期が確認された
- 活動リズムは12/14匹で二峰性の傾向があった
- 活動ピークは5-6時、9-11時、16-18時に見られた
- 活動低下は1-3時、12-15時に見られた
- 平均移動距離は1.74±0.4km/日
- 移動距離の個体差は0.54-4.13km/日
- 平均食事量は46.4±3.6g/日、約179kcal
- 食事回数は平均約8回/日
- 食事リズムは11/14匹で24時間周期が確認された
- 食事ピークは4-10時、17-21時に見られた
暮らしへのヒント
- 猫を「夜行性だから」で片づけず、朝夕に活動の山が出やすい子として見る。
- 夜の運動会は、夕方の遊び、食事時間、飼い主の帰宅後の刺激、日中の休息時間とセットで考える。
- 食事量だけでなく、いつ食べているか、急に時間帯が変わっていないかも観察する。
- 多頭飼いでは、同居猫との関係や避け合いが活動量に影響していないかを見る。
- 研究の時刻をそのまま家庭に当てはめず、その子の数日単位の通常パターンを基準にする。
- 急な活動低下、食欲低下、夜間行動の急増、体重変化、鳴き方の変化は、リズムだけで判断せず獣医師に相談する。
猫の一日リズム研究——朝夕に動きやすい理由を読む
猫は夜行性」とよく言われますが、室内猫の行動はそれだけでは説明しきれません。この講座では、14匹の猫を24時間追跡した研究をもとに、朝夕に活動が高まりやすい理由、食事リズムとの関係、夜の運動会に困ったときの見方を、いち教授とマロン学長がやさしく整理します。