来店客と接触しない44.4%
接触しない時間を人嫌いと決めず、原著内で一致しない検定値にも注意して読みます。

導入会話
マロン学長「接触しない時間が44.4%なら、人嫌いの猫が多かった?」
はち助教授「接触がなかったという観察から、感情や性格までは決められないの。誰が始めた接触かも見ましょう。」
この回でわかること
- 来店客との接触の中身
- 接触を始めたのはほとんど人だったこと
- 人の属性との関連を数字で使わない理由
半分近くは接触なし
焦点個体観察時間の44.4%では来店客との接触がありませんでした。非接触の注意29.0%、接触を伴う注意23.2%、注意なし3.4%でした。個別の行動では、撫でる19.2%、人が猫へ近づく16.1%が多く見られました。
著者らは、接触のない時間がこれほど多かったことを「意外だった」と書いています。来店客の多さや人の密度が影響したかもしれない、という考察です。人の密度や予測できない扱いは猫に慢性的なストレスを与え、不活発や引きこもりとして表れることがある、という先行研究が引かれています。
来店客が多い時間帯には、毛づくろい・食事・排泄といった維持行動が期待より少なく、遊びも抑えられていました。著者らは、新しい環境で維持行動が減ることが行動上のストレスと関連するという先行研究や、予測できない扱いを受けた猫で探索と遊びが抑えられたという報告を引き、この施設でも隠れる・維持行動が減るといったストレスに関わる行動の兆しがあったと述べています。ストレスを直接測ったわけではなく、行動からの推測です。
接触を始めるのは人
猫と来店客のやりとりは、主に来店客から始まっていました。初対面では人の方が先に働きかけるという先行研究と一致します。来店客の滞在は1〜2時間と短く、猫と触れ合うために来ているので、人が多いほど人から始まる接触も増えたのだろう、と著者らは考えています。
一方で、猫が近づくことの方が来店客が近づくことより少なく、接触の主導権は人の側にあったことになります。「猫が近づいてこない」時間の多さは、猫が人を嫌っていた証拠ではなく、猫が選ぶ余地の少ない場だったことの表れかもしれません。
マロン学長「触りに来る人が多いと、猫が自分から近づく前に触られちゃうんだね。」
はち助教授「そういう場だった可能性があるの。だから接触がない時間を、猫の性格で説明しないのよ。」
人の属性との関連は、数字で使わない
人の年齢・性別群との関連も報告されていますが、検定値は結果本文とFigure 6キャプションで一致せず、各群の観察数も不均衡です。来店客は成人女性が多く、子どもは10歳未満が入れないため少数でした。接触の機会そのものが群によって違うので、割合を並べても「猫がどの人を好んだか」の比較にはなりません。
著者らは考察で、猫が子どもに対しては受け身だったこと、女性は猫に話しかけることが多かったこと、猫は男性に近づくことが他の群より多かったことを述べていますが、いずれも一施設の観察で、人の姿勢や動き方の違いが関わるかもしれないとしています。
著者らも、来店客の年齢区分をもっと細かくすること、接触の長さを測ること、人の姿勢の違いを確かめることを今後の課題としています。この部分は、研究の中でもまだ粗い段階です。
原著内で一致しない検定値は推定で選ばず、人の属性による猫の好みとして使いません。
今日からできること
- 接触なしを拒絶や恐怖と決めない
- 猫との距離、場所、前後の行動を一緒に見る
- 属性別の割合は接触機会の分母を確認する
まとめ会話
マロン学長「接触が少ないのは、猫の性格より場の条件の話かもしれないんだね。」
はち助教授「そうよ。最後は、その場に入る側として何を確認するかをまとめましょう。」
次回予告
猫カフェで触りに行く前に確認する順番をまとめます。