最初の100秒を、どう観察した?
帰宅直後の猫31匹を、最初の100秒にそろえて動画観察した研究を紹介します。行動の記録と、猫の内面の解釈を分けて考えます。

導入会話
マロン学長「動画なら、飼い主の思い込みを少し減らせそう。」
いち教授「うん。研究者は帰宅直後の同じ長さを比べたんだ。何を数えて、何を数えなかったかを見ていこう。」
この回でわかること
- 31匹の最初の100秒を分析した
- 22の行動を回数または時間で記録した
- 観察できた行動と猫の内面は別に考える
同じ長さの場面を比べた
参加した40件のうち、撮影角度や人の介入などで条件を満たさない9件を除き、31匹を分析しました。飼い主は帰宅前から5分間を撮影し、研究者は全例で最初の100秒を見ています。動画の長さが家庭ごとに違ったため、いちばん短い動画に合わせて観察時間をそろえ、長さの差による偏りを避けました。
鳴き声、接近、こすりつけ、しっぽ、食べる行動など22項目を、回数または時間として記録しました。座る、しっぽを立てる、毛づくろいのように続く行動は時間で、近づく、鳴く、体を振るのように一瞬で起きる行動は回数で数えています。
項目には、飼い主への接近、飼い主や物へのこすりつけ、しっぽ上げ、しっぽを振る、体を低くする、伸びをする、転がる、遊ぶ、離れる、食器を見に行く、食べる、抱き上げられる、飼い主の介入などが含まれます。鳴き声は、短い「ニャッ」から長く続くゴロゴロまでを一つの項目にまとめ、回数で数えました。動画に映った行動を比べた研究であり、猫が何を感じていたかを直接測ったわけではありません。
マロン学長「31匹って、多いのか少ないのか、ぼくにはわからないな。」
いち教授「行動研究としては小さい規模だよ。著者らも予備的な研究だと書いているんだ。」
誰が、どの猫を数えたか
行動の記録は、15年以上の経験を持つ観察者1人が全例を担当しました。同じ目で見ることで基準のぶれを避ける方法ですが、複数の観察者で一致を確かめる方法は取られていません。
多頭飼育の家庭では、飼い主が最初に名前を呼んであいさつした猫1匹だけを対象にしました。同じ家の猫を複数数えると、飼い主の同じふるまいが何度も反映され、結果が偏るからです。分析した31匹のうち、単頭飼育の家庭が24件、多頭飼育が7件でした。猫の年齢は5件が未回答で、残りの中央値は66か月でした。
記録と解釈を分ける
家庭で観察する時も、「鳴いた」「玄関から離れた」は記録できます。一方で「寂しかった」「怒っていた」は、すぐには確かめられない解釈です。二つを分けておくと、普段との違いを落ち着いて見やすくなります。
研究が22の項目を先に決めてから映像を見たように、家庭でも「何を見るか」を先に決めておくと、その日の気分で見え方が変わることを減らせます。
参加した飼い主の内訳も、結果を読む前提になります。世話者は女性が58%、男性が42%。猫は77%が雑種で、23%が純血種と申告されましたが、血統書の確認はありません。購入した猫は1匹だけで、ほかは譲渡や保護で迎えられていました。トルコの都市部の飼い猫という条件は、ほかの地域へそのまま広げられません。
論文を深く読む
行動どうしの関連は、Spearmanの順位相関で確認しました。世話者や猫の性別、血統などのカテゴリ項目にはWilcoxon順位和検定、年齢にはSpearmanの順位相関を使い、有意だった関連は、ほかの人口統計要因を加えた線形回帰モデルで再確認しています。詳しい数値は論文要約ページで確認できます。
今日からできること
- 帰宅後の短い時間を、できるだけ同じ条件で観察する
- 見えた行動と、自分の解釈を別の欄に書く
- 多頭飼育なら、まず1匹に絞って見る
まとめ会話
マロン学長「見えたことを書いてから考えると、落ち着いて見られそう。」
いち教授「その通りだよ。次は、行動どうしのまとまりを見よう。」
次回予告
第3回は、しっぽ・接近・こすりつけがどう一緒に現れたかを扱います。