しっぽ・接近・こすりつけを、まとまりで見る
帰宅時のしっぽ上げ、接近、こすりつけには一緒に見られやすい関係がありました。相関を猫の感情の確定に使わない読み方を扱います。

導入会話
マロン学長「しっぽを立てて近づくなら、いつも同じ意味なのかな?」
いち教授「一緒に見られやすい行動はあったけれど、意味を一つに固定しないことが大切だよ。」
この回でわかること
- しっぽ上げ・接近・こすりつけには関連があった
- あくび・体を振る・毛づくろいには別のまとまりがあった
- 相関は感情を確定する証拠ではない
行動を組み合わせて見た
研究では、22項目の行動どうしがどれくらい一緒に現れるかを調べました。その結果、しっぽを立てる時間、飼い主への接近、飼い主へのこすりつけが一緒に現れやすい関係でした。著者らは、これが以前から記述されてきた猫のあいさつ行動のまとまりと、おおむね一致していると述べています。短い別れのあとに飼い主へ体をこすりつける行動が、あいさつの主要な要素だとする近年の研究とも重なります。
あくび、体を振る、体をかく、毛づくろいにも別の関係が見られました。著者らはこれを、緊張や興奮を別の行動へ向けることで整える「転位行動」と呼ばれるまとまりかもしれない、と解釈しています。ただし、これは解釈であり、猫の内側の状態を測ったわけではありません。
ここでいう関連は、31匹それぞれの100秒分の合計を並べて、ある行動が多い猫は別の行動も多いか、という形で調べたものです。一匹の猫の中で「しっぽを上げたから近づいた」という順序や原因を追ったわけではありません。関連が見つかっても、どちらが先か、なぜ一緒に出るかは、この方法では分かりません。
マロン学長「あくびが緊張のサインになることもあるの?」
いち教授「その可能性を著者らは挙げているけれど、眠いだけのあくびもある。一つの仕草で決めないのが基本だよ。」
鳴き声と食べ物は、別に動いていた
面白いのは、まとまりに入らなかった行動です。食器を見に行く、食べるといった食べ物に関わる行動は、社会的な行動のまとまりとは関連がありませんでした。著者らは、帰宅時のあいさつの主な動機は空腹ではなさそうだ、と読んでいます。
鳴き声も、ほかの行動と強い関連を示しませんでした。鳴くことは、しっぽ上げや接近のセットの一部ではなく、それぞれの猫が別々に使っている手段のように見えます。「鳴く猫ほど甘えている」「鳴かない猫は冷めている」といった読み方は、この結果と合いません。
複数の仕草を見ると、帰宅時の行動が一色ではないことが分かります。けれど、この関係だけで「しっぽ上げは必ず安心」「毛づくろいは必ず緊張」とは決められません。
猫が選んだ距離も見る
しっぽや声に注目するときも、猫が自分から近づいたか、触られた後に離れたかを合わせて見ます。研究の項目にも「近づく」と「離れる」が別々に入っていました。普段と比べてどうか、環境に変化があったかも、家庭では大切な情報になります。
たとえば、しっぽを立てて近づいてきたのに、なでると数秒で離れていく猫がいます。これを「気まぐれ」と片づけるより、近づく段階と触られる段階で猫の選択が違ったと見るほうが、次の関わりに生かせます。近づいてきた時に触らず、猫が体をこすりつけてくるまで待ってみる、といった試し方ができます。
今日からできること
- しっぽ、距離、体の向きを一緒に見る
- 一回のあいさつを性格の判定に使わない
- 鳴き声の多さを、愛情の量に置き換えない
まとめ会話
マロン学長「仕草を組み合わせても、答えを急がないんだね。」
いち教授「その姿勢が、第4回の数字を読む助けになるよ。」
次回予告
第4回は、男性の世話者に対して鳴き声が多かったという結果を、急がずに読みます。