意外だったのは、ゴロゴロの方だった
個体を言い当てやすかったのがゴロゴロだったという、予想に反する結果を扱う第2回です。

導入会話
マロン学長「前回の予想、外れたって言ってたよね。どうなったの?」
いち教授「個体を言い当てやすかったのは、ゴロゴロの方だったんだ。」
マロン学長「えっ、あの低い音の方が?」
いち教授「うん。研究者自身も『予想に反する』と書いているよ。」
この回でわかること
- 同じ8匹でそろえて比べた結果
- ゴロゴロは約22匹分、ニャーは約6匹分を区別できる計算だった
- 2つの声は、長さも高さもまったく違う
正しく本人と当てられた割合
解析に使われたのは、ニャー276声(14匹分)とゴロゴロ557声(21匹分)です。ただし匹数も本数も違うので、そのままでは比べにくくなります。
そこで、同じ8匹から同じ本数の声をそろえて、あらためて比べ直しました。その結果、正しく本人と判定できた割合は、ニャーが約64%、ゴロゴロが約86%でした。
8匹から当てずっぽうに選べば12.5%です。どちらもそれを大きく上回りましたが、2つの差ははっきりしていました。
マロン学長「ゴロゴロの方が、その子らしさが濃いってこと?」
いち教授「音の特徴として見れば、そうなるね。意味の話はまだ先だよ。」
何匹分を区別できるか
もうひとつ、別のものさしでも比べています。声に含まれる情報量から、理屈のうえで何匹まで区別できるかを計算する方法です。
結果は、ゴロゴロが約22匹分、ニャーが約6匹分でした。ここでも差ははっきりしています。
2つの声は、まるで別物
なぜこれほど違うのか。まず、音そのものが大きく違います。
ニャーの長さは平均0.72秒で、短いものは0.17秒、長いものでも2.21秒ほどです。ゴロゴロは平均10.77秒。長いものは39秒を超えます。
音の高さの中心も、ニャーが約1738Hz、ゴロゴロが約268Hzと大きく離れています。短くて高いニャーと、長く低いゴロゴロ。作られ方も別です。
マロン学長「長い音の方が、情報が入りやすかったりする?」
いち教授「その可能性はあるね。ただ研究者は、別の理由の方を重く見ているよ。それは最終回で扱おう。」
論文を深く読む
個体の判定には判別分析(DFA)を使い、全データ・同じ8匹にそろえたデータなど複数の組み合わせで分類精度を比較しています。偶然の一致率(ニャー7.14%・ゴロゴロ4.76%)との差は二項検定で確認しました。情報量はビット単位で算出しています。詳しい数値は論文要約ページで確認できます。
今日からできること
- ゴロゴロの長さを一度計ってみる。思ったより長く続くことが多い
- ニャーとゴロゴロを、同じ「鳴き声」として扱わない
まとめ会話
マロン学長「人に向けて使う声の方が個性的、とは限らないんだ。」
いち教授「そこが面白いところだね。次回は、ニャーの方に何が起きているのかを見よう。」
マロン学長「ニャーは個性が薄い、ってこと?」
いち教授「薄いというより、別のものを運んでいる可能性があるんだ。」
参考文献
- Russo D, Schild AB, Knörnschild M. Meows encode less individual information than purrs and show greater variability in domestic than in wild cats. Scientific Reports. 2025;15:43490. https://doi.org/10.1038/s41598-025-31536-7