イエネコのニャーは、野生のネコよりばらついていた
6種のネコのニャーを比べ、イエネコのばらつきが最も大きかった結果を扱う第4回です。

導入会話
マロン学長「野生のネコも、ニャーって鳴くの?」
いち教授「鳴くよ。ただ、頻度も形もイエネコとは違うんだ。」
マロン学長「比べられるんだ!」
いち教授「今回は6種のネコの声を並べた分析を見よう。」
この回でわかること
- 6種のネコのニャーは、種ごとにはっきり違っていた
- 同じ種の中でのばらつきは、イエネコが最も大きかった
- この比較の限界
5種の野生ネコと並べる
研究者は、ベルリンの動物音アーカイブから、5種の野生ネコのニャー185声を取り寄せました。ジャングルキャット、アフリカヤマネコ、ヨーロッパヤマネコ、クーガー、チーターです。
イエネコを加えた6種のニャーを同じ方法で解析したところ、87%が正しい種に分類されました。種ごとに、ニャーの形にはっきりした違いがあるということです。
ばらつきが最も大きかったのはイエネコ
そのうえで、同じ種の中でのばらつきを見ました。声の特徴がどれくらい散らばっているかを測る方法です。
結果は、イエネコが最も大きく散らばっていました。ヨーロッパヤマネコ、アフリカヤマネコ、ジャングルキャットのニャーは、もっと形がそろっています。
マロン学長「イエネコの鳴き方はバリエーションが多いんだ。」
いち教授「そう見える結果だね。研究者は、人と暮らすようになったことと結びつけて考えているよ。」
人と暮らすことで、変わりやすくなった?
もともと猫は、単独で暮らし、遠くまで届く合図を使う動物でした。それが人のそばで暮らすようになり、近い距離でのやりとりが増えました。
研究者は、その過程でニャーの形が自由に変わりやすくなったのではないか、と述べています。人に向けた声として使われる中で、決まった形である必要が薄れ、代わりに場面ごとに調整できることの方が役に立つようになった、という筋書きです。
過去の研究では、人はイエネコのニャーを野生ネコのニャーより心地よく感じることも報告されています。人の好みが、声のあり方に影響してきた可能性も論じられています。
この比較には限界がある
ただし、慎重に読む必要があります。
野生ネコの録音はアーカイブ由来で、数が少なく、種によって偏りがあります。アフリカヤマネコは3個体から6声、クーガーは3個体から13声、チーターは3個体から22声です。イエネコの63声と比べると、はるかに少ない数です。
また、これは今いる6種を並べた比較であり、時間をさかのぼって「昔はこうだった」と確かめたものではありません。家畜化で変わったという説明は、あくまで推測を含む解釈です。
今日からできること
- 猫の鳴き方の多様さを、人と暮らしてきた歴史とあわせて見る
- 種を比べた研究では、それぞれの録音数の差を確かめる
まとめ会話
マロン学長「猫の声って、人と一緒にいるうちに変わってきたのかもしれないんだね。」
いち教授「そう考えられる、という段階だよ。断定はしない方がいい。」
マロン学長「最後は何を見るの?」
いち教授「いちばん大事な話だ。個体差があることと、それを伝えるために使っていることは別だ、という話をしよう。」
参考文献
- Russo D, Schild AB, Knörnschild M. Meows encode less individual information than purrs and show greater variability in domestic than in wild cats. Scientific Reports. 2025;15:43490. https://doi.org/10.1038/s41598-025-31536-7