予想外の箱より、同じ箱に強く反応した
隠した箱とは別の箱からおもちゃが現れる期待違反条件で、猫の反応が研究者の予測と逆になった意味を考える第4回です。

導入会話
マロン学長「見えない間におもちゃの場所が変わったら、びっくりして長く見そうだよね。」
いち教授「研究者もそう予測したよ。人の乳幼児や犬の研究では、予想外の出来事を長く見たり、よく確かめたりする反応が報告されているからね。」
マロン学長「猫も同じだった?」
いち教授「条件は見分けたように見えるけれど、反応の方向は逆だったんだ。」
この回でわかること
- 猫は一致条件と期待違反条件に同じ反応をしたわけではない
- おもちゃに触る・箱へ向かう行動は一致条件の方が多かった
- 飼い主と研究者の違いも、1方向にはまとまらなかった
「ありえない出来事」への反応を見る
期待違反法は、正解を選ばせる代わりに、起きるはずのない出来事への反応を見る方法です。今回の一致条件では、猫が見ていた箱からおもちゃが現れます。期待違反条件では、視界を遮った間に箱を入れ替え、おもちゃが別の箱から現れたように見せます。
研究者は、期待違反条件で猫がおもちゃを長く見て、箱をよく確かめ、触りやすくなると予測しました。もし隠れたおもちゃの場所を頭の中で保っていれば、予想外の現れ方へ反応が増えるだろうという考えです。
結果は予測と逆だった
実際には、猫がおもちゃに触れやすかったのは一致条件でした。おもちゃが出た箱へ近づく・触る行動も、期待違反条件より一致条件で多くなりました。
この結果からは、猫が2条件へまったく同じように反応したとは言えません。ただし、研究者が「驚き」の指標として予想した方向とは逆です。論文は、猫が人の乳幼児や犬と反対の反応を示したと述べ、動機づけと認知のどちらで説明できるか、追加研究が必要だとしています。
マロン学長「違いには気づいたように見えても、予想外の方を長く確かめる形ではなかったんだ。」
いち教授「そうだよ。予測と逆だった結果は、予想に合う物語へ直さず、そのまま残すことが大切なんだ。」
「驚かなかった」とも決められない
反応が少ない理由はいくつも考えられます。予想外の動きで関心が切れたのかもしれません。2つの箱の間隔は約2cmしかなく、猫には別々の場所ではなく、1つの大きな装置に見えた可能性もあります。最初の見える移動課題を経験したことが、後の見方へ影響した可能性も完全には消せません。
どの説明も、この研究だけでは選べません。期待違反条件で見る時間が長くなかったことを、「猫は驚かない」「場所を覚えていない」と日常語で断定すると、論文より強い結論になります。
知らない研究者への反応も複雑だった
人の親しさについても、結果は単純ではありません。研究者が箱を操作した試行では、飼い主の試行よりおもちゃへ触れる確率が高くなりました。一方で、おもちゃが出た箱や空の箱へ向かう行動は、研究者の試行で少なくなりました。
触るかどうかと、箱へ近づく・触る回数が同じ方向に動いていません。論文は、知らない人の新しさへ注意が向く一方、距離を保つ反応もあり得ると考察しています。ただし、研究者は1人で、猫ごとの個性も分け切れません。知らない人の方がよい、飼い主の方がよいという比較にはできません。
今日からできること
- 研究の予測と違う結果を、「驚かなかった」など1つの意味へ急いでまとめない
- 猫の反応を見るとき、視線・近づく・触るを別の行動として観察する
まとめ会話
マロン学長「猫は2条件に同じ反応をしたわけじゃない。でも、予想外の方へ強く反応する形でもなかったんだね。」
いち教授「そうなんだ。違いが出たことと、その意味が分かったことは別だよ。」
マロン学長「人への反応も、測る行動で方向が変わったんだ。」
いち教授「最後は、こうした複雑な結果をどこまで暮らしへ持ち帰れるか整理しよう。」
次回予告
猫がやらなかったことを、能力不足にしない。標本・装置・家庭内実験の限界から全体を読み直します。