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ネコフリークス大学Neko Freaks University
講座184第1回 / 全5回

猫は家からどこまで歩く?——『普段』と『脱走』は別

外に出る飼い猫のGPS研究を、脱走後の居場所予測と分けて読み始めます。

いち教授
いち教授
講座184

導入会話

マロン学長「外に出た猫が見つからない時、研究で分かった『よくいる範囲』を見ればいいのかな?」
いち教授「その数字が、どんな猫の、どんな日の移動かを先に見よう。今回追ったのは、普段から外へ出る飼い猫だよ。」

この回でわかること

  • GPSで追った猫の条件
  • 普段の行動圏と脱走後の居場所の違い
  • 中央値を個体の上限にしない理由

外を歩く猫の二つのリスク

論文の導入部は、外を歩き回る飼い猫が接する危険を並べています。猫白血病ウイルスやトキソプラズマなどの感染、他の猫との争い、交通事故、野生動物や犬からの攻撃、そして迷子になったり野生化した猫の群れに加わったりする危険です。同時に、猫は野生動物にとっての危険でもあります。英国の飼い猫は2011年で約1,000万〜1,100万匹と見積もられ、人の住む場所に密度が高いため、捕食の総数の推計は大きくなります。

著者らの問いは、この二つのリスクを同時に減らす方法があるか、でした。狩りを減らす対策が猫の移動範囲も縮めるなら、野生動物だけでなく猫自身の安全にも利益がある。それを確かめるために、狩りを減らす介入試験と並行して、GPSで猫の移動を追ったのがこの研究です。

研究で追ったのは、いつもの外出

Cecchettiら(2022)は、南西イングランドの48世帯で飼われ、外で野生の獲物を定期的に捕って家へ持ち帰る猫を追跡しました。最終的な空間解析は72匹です。猫にはGPS付き首輪を装着し、春の介入試験の前後で移動を記録しました。

対象は、初めて家から出てしまった脱走猫ではありません。普段から自分の家へ戻りながら外へ出ている猫の行動です。見知らぬ環境で驚いて隠れた猫や、移動先から逃げた猫とは状況が違います。

マロン学長「『外にいる猫』でも、いつものお散歩と突然の脱走は同じじゃないんだね。」

参加した家庭は、社会・放送・印刷メディアを通じて募集され、まず2週間、猫が持ち帰った獲物を記録し、少なくとも1匹の持ち帰りがあった世帯が試験に選ばれました。GPSを装着する猫はさらに、飼い主の同意と、首輪を落とした時に交換に行ける大学からの距離で選ばれています。著者ら自身、この空間解析の対象は元の試験の無作為な代表標本ではないと書いています。

平均的な数字は「ここにいる」の地図ではない

研究の行動圏の中央値は1.51haでした。これはGPSの記録から推定した、普段よく利用する範囲の面積です。家を中心とする円の半径を示していません。72匹の真ん中の値なので、広く歩く猫も狭く歩く猫もいます。

この研究では17.3haという大きな行動圏の1匹が解析へ強く影響したため、最終解析から除かれました。この事実も、中央値を全猫の上限として使えない理由の一つです。

脱走の問いに答えていないこと

研究は、脱走の後に猫がどこへ潜むか、何日で戻るか、どんな探し方なら見つかるかを測定していません。GPSの普段の範囲を地図へ描いて、そこにいなければ探さなくてよい、とも言えません。

すでに猫が行方不明なら、この論文の中央値で状況を楽観したり、待つだけにしたりしないことが大切です。具体的な捜索と連絡は、その地域の実務情報を別に確認する必要があります。

今日からできること

  • 行方不明になった時は、研究の数字より地域の捜索情報を優先する
  • 「よくいる範囲」を安心材料にせず、探す手を止めない

まとめ会話

マロン学長「この研究は普段の外出を教えてくれるけれど、脱走したぼくの居場所は教えてくれないんだね。」
いち教授「そう。数字の前に、研究した場面と自分の場面が同じかを確かめよう。」

次回予告

行動圏の面積、家からの最大距離、1日の総移動距離という三つの数字を分けて読みます。

参考文献

Cecchetti M, et al. (2022). Conservation Science and Practice, 4(2), e597. https://doi.org/10.1111/csp2.597

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