触れ合いが増えると、猫は落ち着かなくなる?
注意要求の制限前後差と、接触増加群で高かった新奇恐怖・過剰毛づくろい等の主効果を分けて読みます。

導入会話
マロン学長「接触が増えた群で毛づくろいの得点が高いなら、触りすぎが原因なの?」
いち教授「その結論には進めないよ。群の差と、増やした後の変化は別なんだ。ここを分けられると、この研究の読み方が決まる。」
この回でわかること
- 制限前後で変わった行動と、変わらなかった行動
- 接触増加群で高かった得点の読み方
- 「群の差」と「変化」の違い
制限前後で変わったのは注意要求
猫の注意要求には制限前後の主効果があり、制限後に高い結果でした(χ²(1)=5.059, p=.024)。飼い主が家にいる時間が増えた時期に、猫が飼い主に働きかける行動が増えたと評価された、ということです。著者らは考察で、人が家にいることで猫が接触を求める機会が増えた可能性を挙げています。
勤務条件との関係では、訓練のしやすさの得点に、出勤から在宅へ変わった群が他の群より低いという結果もありました。休息・睡眠場所の好みでも組み合わせによる差はありましたが、その後の群どうしの比較では有意ではありませんでした。
接触増加群で高かった得点
一方、接触増加群では、新奇恐怖(χ²=17.977, p<.001)、過剰・強迫的自己毛づくろい(χ²=5.796, p=.016)、その他の強迫行動(χ²=8.758, p=.003)、薄明薄暮の活動(χ²=10.297, p=.001)が高く報告されました。
遊び・活動と注意要求は不変・減少群の方が高い結果でした。この群の大半は不変257人で、減少は10人です。
接触増加群の得点が高いことと、接触を増やした後に得点が上がったことは同じではありません。
「群の差」と「変化」は別
ここで報告されたのは主に「群の主効果」です。接触を増やした群と増やさなかった群を比べたら、増やした群の方が新奇恐怖などの得点が高かった、という意味です。「接触を増やしたら、その後で得点が上がった」という、群と前後の組み合わせの効果ではありません。
著者も、これらのストレス関連行動自体には制限前後の有意な変化がなかったと述べています。増加群の猫は、制限前からこれらの得点が高めだった可能性があります。
マロン学長「もともと怖がりな猫の飼い主が、心配して接触を増やしたのかもしれないんだね。」
いち教授「その可能性は残る。逆の向きも、両方に関わる別の理由も、この設計では区別できないんだ。」
もともとの猫の行動を気にした飼い主が接触を増やした可能性や、別の生活変化が両方へ関わった可能性も残ります。著者らは、人からの接触要求のほか、新しい家具や物、オンライン会議などの聞き慣れない音が関わったかもしれないと考察していますが、この研究はそれらを直接測っていません。
犬の飼い主でも似た構図でした。接触が増えた群で飼い主への攻撃、同居犬への攻撃、接触への過敏さ、注意要求などの得点が高い一方、これらも群の主効果で、接触を増やした後の変化とは限らないと著者らは注意しています。猫と犬で同じ注意が繰り返されていることは、この研究の読み方の要が「群差と変化の区別」にあることを示しています。
体の変化は別に扱う
急な過剰毛づくろい、脱毛・赤み・傷、食欲や排泄の変化がある時は、接触のせいと決めず獣医師へ相談します。毛づくろいの増加には皮膚の病気、痛み、アレルギー、寄生虫といった体の原因もあります。研究の尺度は飼い主の評価であり、体の状態を調べたものではありません。
今日からできること
- 人が接触を始めたか、猫が始めたかを記録する
- 猫が離れた後は追わず、次の行動を観察する
まとめ会話
マロン学長「前後で変わったのは注意要求で、接触の群差は『増やした後の変化』ではないんだね。」
いち教授「その区別が今回の要点だよ。次は、飼い主の気分の得点と猫の行動の関連を読もう。」
次回予告
WHO-5と猫の行動得点の関連を、原因の向きを決めずに読みます。