仕事中も猫が「近づく・離れる」を選べる家へ
在宅勤務中の猫との接触を固定回数で管理せず、接触の開始と終了、休息場所、移動経路を観察します。

導入会話
マロン学長「仕事中に来てくれたら、毎回撫でた方がいいのかな?」
いち教授「近づくことが、いつも触ってほしい合図とは限らないよ。研究が測らなかった部分を、家では見られるんだ。」
この回でわかること
- 研究が数えた「接触」と数えなかったこと
- 猫が始める・続ける・終える選択を残す方法
- 一度に一つだけ変える理由
研究が数えた「接触」
研究は、近づく、触る、呼ぶ、給餌、おやつの五項目が増減したかを合計しました。撫でた時間、触った部位、猫と人のどちらが始めたか、猫がどう接触を終えたかは区別していません。「接触が増えた」という一つの得点の中に、猫が来て膝に乗った場面も、人が抱き上げた場面も、同じ「増えた」として入っています。
第3回で見たように、接触増加群では新奇恐怖や毛づくろいの得点が高めでした。著者らは、人からの接触の要求が猫にとって負担だった可能性を一つの解釈として挙げています。確かめられたことではありませんが、家庭で確認しやすい観点です。
接触の量だけでなく、猫が始める・続ける・終える選択を残すことが、家庭で確認しやすいポイントです。
研究が示さなかった「配置」の話
ここからは研究が配置を比較した結果ではなく、家庭で観察しやすくするための提案です。
- 机のすぐ横だけでなく、少し離れて休める場所も残す
- 机へ近づく経路と、触られずに通り抜ける経路を塞がない
- 会議、通知音、椅子の移動の前後を記録する
- 猫が顔を背ける、体を引く、場所を変える時は追わない
著者らは考察で、新しい家具や物、オンライン会議の聞き慣れない音が猫の新奇恐怖に関わったかもしれないと述べています。在宅での仕事は、人がいる時間だけでなく、家の中の音や物の配置も変えます。猫の行動が変わった時、接触の量だけでなく、こうした変化も候補に入れておきます。
マロン学長「オンライン会議の声も、猫にとっては知らない音なんだね。」
いち教授「そうかもしれない。だから、猫が近づいてきた時の直前に何があったかを、一緒に書いておくといい。」
一度に一つだけ変える
猫が机へ来るたびに、遊び、食事、抱き上げを一度に変えると、何と行動が結びついたか分かりません。まず時刻、直前の人の行動、猫の接近、接触、離れた先を記録します。変更するなら休息場所を一つ追加するなど、一度に一項目にします。
研究の弱点は、制限前の行動を思い出して答えたことでした。家庭では、変える前の数日を記録しておくことで、その弱点を避けられます。
研究が示したことを、もう一度
この研究が示したのは、在宅時間が増えた飼い主で猫との接触が増えたこと、猫の注意要求の得点が制限前より高かったこと、接触増加群や飼い主の気分の得点と一部の行動得点に関連があったこと、までです。後ろ向きの横断質問票で、多重検定の補正はなく、在宅や接触が猫の行動を変えたという因果は結論できません。
この講座で決めないこと
- 在宅時間や接触の増加が猫の行動を変えたかどうか
- 飼い主の気分が猫に影響するかどうか
- 適切な接触の量や頻度
- 過剰な毛づくろいなどの原因や診断
これらは原著が横断の回顧調査で調べていない、または著者自身が結論できないとした範囲です。
今日からできること
- 仕事中の接触を「誰が始め、猫がどこで終えたか」で一件だけ記録する
- 机から少し離れた休息場所と、開いた移動経路を確認する
まとめ会話
マロン学長「在宅で猫と過ごす時間が増えた分、猫が選べる形にするのが大事なんだね。」
いち教授「そう。前後差と群差を分けて読んだら、家では日々の観察に戻ろう。」
講座のまとめ
日本の最初の緊急事態宣言後に612人の猫の飼い主へ行われた質問票調査では、在宅時間の増加とともに猫との接触が増え、猫の注意要求の得点が制限前より高くなっていました。接触増加群や飼い主の気分の得点と一部の行動得点に関連がありましたが、思い出して答えた横断調査で、原因の向きは決められません。家庭では、接触の量より猫が始めて終える選択を残し、変える前を記録して一つずつ確かめます。