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ネコフリークス大学Neko Freaks University
講座067第3回 / 全5回

RNAとタンパク質を探すと何がわかる?

遺伝子配列に変化があっても、実際に使われているかは別の確認が必要です。猫の味蕾でTas1r2とTas1r3のRNA・タンパク質を探した3つの方法と結果を解説します。

いち教授
いち教授
講座067

導入会話

マロン学長「前回は設計図の読み方が途中で止まると分かったけど、それで調査は終わりじゃないんだね。」 いち教授「配列から予測するだけでなく、細胞がその遺伝子を使っているか確かめるんだ。」 マロン学長「RNAとタンパク質を探すの?」 いち教授「その通りだよ。別の方法で同じ方向の結果が出るかが大切なんだ。」

この回でわかること

  • 遺伝子の発現とは何か
  • RNAを調べた2つの方法
  • T1R2・T1R3タンパク質の確認結果

配列があることと使われることは別

DNAに遺伝子らしい配列が残っていても、細胞がその情報をRNAへ写し、タンパク質まで作っているとは限りません。この情報が使われる流れを、遺伝子の発現と呼びます。

研究チームは、味蕾を含む猫の有郭乳頭と茸状乳頭を使いました。有郭乳頭は舌の奥側、茸状乳頭は舌の前方にもある小さな構造です。どちらにも味を受け取る細胞が含まれます。

比較の軸は明確です。機能している可能性が高い Tas1r3 と、偽遺伝子と考えられる Tas1r2 を、同じ味覚組織で調べました。

RT-PCRでRNAを探す

最初はRT-PCRです。細胞内のRNAをDNAへ写し直し、狙った部分を増やして検出する方法です。

Tas1r3 のRNAは味覚組織から検出されました。一方、Tas1r2 については、予測された配列に対応する70を超えるプライマーを使っても検出できませんでした。プライマーは、増やしたい場所を指定する短い目印です。

ひと組の目印で出なかっただけなら、場所の選び方の問題も考えられます。多数の場所を試しても見つからなかったことは、Tas1r2 RNAがないか、ごく少ないという解釈を支えます。

T1R3側は検出され、T1R2側は多数の目印を使っても検出されないという対照がありました。

組織の中でRNAの場所を見る

次にin situハイブリダイゼーションを使いました。これは、特定のRNAが組織のどこにあるかを目印で可視化する方法です。

有郭乳頭の味蕾では、Tas1r3 用の目印に信号が出ました。対照用の目印には信号が出ず、方法が狙ったRNAを見ていることを確認しています。

同じ組織で Tas1r2 用の目印には検出可能な信号が出ませんでした。RT-PCRの結果と別の方法で同じ方向を示したことになります。

マロン学長「RNAがあるかだけじゃなく、味蕾の中にあるかまで見たんだね。」

抗体でタンパク質を探す

最後は免疫組織化学です。狙ったタンパク質に結びつく抗体を使い、組織内にタンパク質があるかを調べます。

有郭乳頭10個と茸状乳頭4個では、T1R3様の反応が味蕾に見られました。同じ組織でT1R2は検出されませんでした。

T1R2用の抗体は、対照となるラットの味蕾の一部を標識しました。猫で何も見えない理由を、抗体がまったく働かなかったからだとする可能性を減らしています。

配列、RNA、タンパク質という3段階が、猫で機能的なT1R2が作られないという同じ結論を支えました。

ただし「検出されなかった」は、あらゆる条件で分子が絶対にゼロだという意味ではありません。著者らも、転写されないか、転写されても速やかに分解される可能性を挙げています。

今日からできること

  • 研究結果を読むとき、DNAの予測だけか、RNA・タンパク質まで確認したかを見る
  • 「検出されない」を「絶対に存在しない」と言い換えない

まとめ会話

マロン学長「設計図の変化に加えて、RNAもT1R2タンパク質も見つからなかったんだね。」 いち教授「複数の方法が同じ方向を示したから、結論が強くなるんだよ。」 マロン学長「でも最初の配列が一匹だけなら、その子だけの違いかもしれない?」 いち教授「次は別の家猫と、トラ、チーターで確かめた範囲を見よう。」

次回予告

第4回は、家猫6匹と大型ネコ科2種の追加確認、進化解釈の限界を読みます。

参考文献

Li X, et al. Pseudogenization of a Sweet-Receptor Gene Accounts for Cats’ Indifference toward Sugar. PLoS Genetics. 2005;1(1):e3. https://doi.org/10.1371/journal.pgen.0010003

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